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第1話

英(はなぶさ)怜央(れお)は祖父と対峙していた。 自宅でもある英組事務所のビルの最上階。 育ての親で英組組長の祖父は対立する組との諍いに頭を痛めていた。 堅気を巻き込まない。 任侠に生きる漢としての最低限のルールは互いに守ってはいるものの、仕事(シノギ)や縄張り(シマ)を巡っての小競り合いは尽きない。 組員たちの中には顔を合わせるだけで流血騒ぎになるのも茶飯事となっている。 とは言っても、ヤクザだ。 元から流血騒ぎは茶飯事のようなものだが、ヤクザとて無駄な抗争は避けたい。 ある繁華街の地権を狙い、ある組と睨み合っている。 その緊張は日々増していた。 「怜央、組のこれからの事でお前に頼みがある」 しん、と静まり返ったリビングに祖父のやや枯れた声が響く。 だが、真っ直ぐに射抜いてくるような双眸は力強い。 その眼光の鋭さには孫の怜央でもビクリとするものがある。 眼光の鋭さには孫の怜央でもビクリとするものがある。 「はい」 思わず背を正した。 一人の祖父として孫と接している顔ではなく、重く大きなものを抱えてきた組長の顔だ。 「お前にしか、頼めない」 よっぽどのことだろう。 いくら組長の孫とはいえ、組の活動に関わっていない怜央に組についての頼み事をするなど。 「いや、俺っ、跡目継げとか無理だから」 まさかと思い、牽制する。 家業が嫌いなわけではないが、祖父のような組長には到底なれない。 次々と暴力団が潰れていく中、自分が継いで厳しい世の中を組員たちを引き連れていける姿など想像できない。 「んなことお前に期待したこと一度もないわ」 「あっそ」 吐き捨てるように言われ渇いた笑いが漏れる。 ほっとしたような。がっかりしたような。 「縁談だ」 が、次の言葉に思考が止まった。 「は?」 「お前に縁談がある。男とのな。拒否権はない」 「は?なんだよ、それ」 「籍を入れるのは決定事項だ」 何を言っているのかわかっているが、わからなかった。 「早いとこ、曾孫の顔でも見せてくれ」 呑気に茶を啜る祖父に怜央は戸惑うばかりだった。

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