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市川先生×夏樹(第1話)

 ピーッ、とオーブンが鳴り、笹野夏樹(ささのなつき)は勇んでミトンを手にはめた。  キッチンは今やケーキ作りに必要な道具や材料でぐちゃぐちゃになっており、ところどころに牛乳や卵が飛び散っている。初めてケーキ作りなんぞに挑戦したせいか、思った以上にキッチン周りが汚れてしまった。夏樹自身も自分の手際の悪さに呆れているところだ。  でも、今はそんなこと気にしていられない。片付けは後でやろう。  夏樹は早速オーブンを開け、ドキドキしながら中身を取り出した。  美味しそうなスポンジケーキの香りがする。今度こそ上手に焼けているに違いない。  ……が。 「えっ?」  ふっくらと焼き上がっている予定のスポンジケーキは、何故かぺちゃんこに潰れていた。ところどころ黒く焦げており、明らかに失敗しているとわかる。 「だあぁぁ! もうっ!」  思わずミトンを床に投げ捨てた。  もう何回も練習しているのに、どうしても上手く焼き上がらない。本に書いてある通りに材料を用意し、レシピ通りに手順を踏んで、これといったミスなくオーブンに入れているはずなのに、なんで上手くいかないんだろう。おかしい。オーブンの故障としか思えない。 「はあ……」  夏樹はずるずると床に座り込んだ。  なんだかやる気が失せる。いくら自分が頑張っても、オーブンが悪いんじゃどうしようもないじゃないか。材料も無駄になるし、失敗したケーキももったいない。  ていうか、なんで俺はこんなことしてるんだろう。料理なんてほとんどやったことないのに、いきなりデコレーションケーキを作るだなんて、ハードルが高すぎるのではないか。 (それもこれも、あの変態教師がムチャ振りするからだ……!)  夏樹の恋人である体育教師・市川慶喜(いちかわよしのぶ)。爽やかな見た目とさっぱりした性格で、学校でも人気のある好青年だ。  ……いや、好青年だと思われている。  実際の市川は、あの手この手で夏樹をレイプしてくる変態教師だ。  学校の休み時間に空き教室で抱かれることはもちろん、彼の車の中で可愛がられることもあれば、自宅に連れ込まれて足腰を潰されることもある。  プールでの補習授業の時はセーラー水着を着せられてしまったし、夏休みにお祭りに行った時は浴衣と帯を使った変態プレイを存分に味わわされた。今思い出しても顔から火が出るくらい恥ずかしい。

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