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ありがとう颯斗

完全に烈に戻ったわけじゃない。 だから以前の烈に戻ろうとしなくて良いんだと颯斗があの日言ってくれた。 颯斗が好きになった烈は今の僕じゃない。 乱暴で痛みさえも感じない素直になれない意地っ張りなそんな烈が颯斗にだけは素直になれていた。 そんな烈が好きだったはずなんだ。 今の僕じゃあまりにも違いすぎる。 それでも颯斗は僕を好きだと言って他の誰よりも優しく接してくれている。 本当に颯斗の側に居てもいいんだろうか? 不安で胸が押し潰されそうになるけれど颯斗を好きだという気持ちが勝っている間は素直に側にいようと決めている。 「烈?具合悪いか?」 「えっ?大丈夫だよ。それでこれからの僕は樫井烈として学校に行っていいって事だよね?」 「兄貴が手配してくれた。それと烈の父親なんだが・・・。」 父親は行方不明では無かった。 本当は大金と交換であの2人に引き渡して海外に移り住んでいると教えてくれた。 それだけの額を父親は2人から貰っていたんだ。 「そうなんだ。僕は売られたんだね。」 「伝えるか迷ったが烈なら知りたいんじゃないかと思ってけれど烈がそんな顔をするなら言わなければ良かった。」 「平気じゃないけれど父親が売らなければ颯斗に出会えなかった。だからもう父親は居ないと思う事にするよ。」 「烈、好きだ。」 颯斗は優しく僕を抱きしめてくれた。 温かくて落ち着ける場所は今ここにあるんだから僕は凄く幸せだよ。 ありがとう颯斗。

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