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第88話

俺の脅しが効いたのか、夜の翔はお利口だった。 俺は久し振りの出社の日を迎え、翔に凛を頼み、少し早めに家を出た。 たった10日間でいろんなことがあり過ぎた。 弟夫婦が旅立った後 残された姪の凛を引き取り、弟の妻の兄との同居と同時に恋人になり、事実上の結婚生活が始まっている。 凛のこともあるし、理解のある片岡課長に相談に乗ってもらおう。 同僚達に挨拶とお詫びをしつつ、課長のデスクに直行した。 「おはようございます。 私事で長い間ご迷惑お掛けして申し訳ありませんでした。」 「おはよう。大変だったな。で、少しは落ち着いたのかい?」 「はい、なんとか。それでちょっとご相談が…」 「じゃあ、会議室を使うとするか。 おーい、朝からすまないが、ちょっと席外すしよろしくー。」 「ところでさ、相沢君。その指輪…どうしたの? 朝からその話で持ちきりでさ。 社内きっての独身イケメンの君が、遂に結婚したって、総務や秘書課で女子社員が泣いてるらしいぞ。」 いかにも面白いという風に課長が笑いながら切り出した。 「えっ、そんなに目立ちますか? 泣いてるってオーバーな。 あの…えーっと…これから先の人生を共に歩むと誓ったパートナーから贈られたもので…」

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