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第120話
2日も経てば頬の腫れも引き、俺はすぐにでも出社しようとしたが、課長命令で一週間の休暇となった。
俺が『病欠』という大義名分で休みの間、翔はウザいくらいに俺の世話を焼きたがり、凛にも『いい加減にして』と飽きられる始末で、俺もホトホト困り果てていた。
凛がいない日中は特に酷く、暇さえあれば俺にくっ付き離れず、食事も自ら食べさせようとしたり、部屋の中の移動ですら抱いていこうとする。
ついに俺はキレて、翔の真正面に仁王立ちになって怒鳴りつけた。
「おい、翔、もう、いい加減にしてくれないか。」
「ん?なんのこと?」
「俺は病気じゃない。子供でもない。自分のことは自分でやるから、ほっといてくれないか。」
「えー、でも智のこと構いたい。ずっとそばに居たい。」
「構ってくれるのはありがたいが、普通にしてくれないか。ウザい。面倒くさい。
これ以上しつこくするなら別居考えるぞ。」
うっ と唸って翔ががっくり項垂れた。
「だって、でも、智がまたどこかに連れて行かれたら俺、俺…どうしていいかわからなくなる。
もう、あんな思いはイヤだ。
智とくっ付いていたい。側にいたい。ずっと守るって約束したじゃないか…」
翔の悲痛な哀願の言葉にハッとした。
こいつもあの事件がトラウマになって精神的なダメージを受けているんだ。
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