120 / 516

第120話

2日も経てば頬の腫れも引き、俺はすぐにでも出社しようとしたが、課長命令で一週間の休暇となった。 俺が『病欠』という大義名分で休みの間、翔はウザいくらいに俺の世話を焼きたがり、凛にも『いい加減にして』と飽きられる始末で、俺もホトホト困り果てていた。 凛がいない日中は特に酷く、暇さえあれば俺にくっ付き離れず、食事も自ら食べさせようとしたり、部屋の中の移動ですら抱いていこうとする。 ついに俺はキレて、翔の真正面に仁王立ちになって怒鳴りつけた。 「おい、翔、もう、いい加減にしてくれないか。」 「ん?なんのこと?」 「俺は病気じゃない。子供でもない。自分のことは自分でやるから、ほっといてくれないか。」 「えー、でも智のこと構いたい。ずっとそばに居たい。」 「構ってくれるのはありがたいが、普通にしてくれないか。ウザい。面倒くさい。 これ以上しつこくするなら別居考えるぞ。」 うっ と唸って翔ががっくり項垂れた。 「だって、でも、智がまたどこかに連れて行かれたら俺、俺…どうしていいかわからなくなる。 もう、あんな思いはイヤだ。 智とくっ付いていたい。側にいたい。ずっと守るって約束したじゃないか…」 翔の悲痛な哀願の言葉にハッとした。 こいつもあの事件がトラウマになって精神的なダメージを受けているんだ。

ともだちにシェアしよう!