121 / 516
第121話
俺は自分のことしか考えてなかったかもしれない。
どんな思いで俺を探し、『落とし前』という後始末をしてくれたのか。
俺を助けるために必死で、そしてその後も俺のことを一番に考えてくれて。
叱られた小さな子供のように背中を丸めた翔が、堪らなく愛おしくなった。
俺は翔に近付くと、膝に乗り両手をそっと首に回して、その匂いを胸一杯に吸い込んだ。
「翔、ごめん、言い過ぎた。
俺だけが傷ついたわけじゃないのに。
お前もどんなに傷ついてるのか考えなくてごめん。
凛がいない時は思い切り甘やかしてくれ。あいつがいるとやっぱり恥ずかしいからな。
翔、大好きだよ。」
「智…いいのか?俺、自分でもおかしいと思ってるんだけど、止められない。
こんなの、あの女と同じことしてるんじゃないか…」
「あの女とは違う!翔、お前だからいいんだよ。なあ、早くギュッと抱きしめてくれよ。」
胸元にすりすりと身体を密着させて翔を誘う。
ゴクリと喉を鳴らした翔は、骨が折れるくらいに抱きしめてきた。
ともだちにシェアしよう!