169 / 516

第169話

俺は少し時間をずらして食堂に向かう。 人も(まば)らなこの時間帯は、群れたくない俺にとって、一息つける貴重な時間だ。 翔の作ってくれた弁当を広げると、目でも楽しめるようにと配慮してくれているのがわかって、顔がにやけてしまう。 んー、美味い。翔、ありがとう。 午後からも頑張れるぞー! 感謝しつつ食べていると、ふっと目の前に人影が… 「相沢さんですよね?はじめまして…かな?僕、二課の西條です。」 『ほんわか』という形容詞がぴったりの美少年風の『西條君』は、ふにゃんと笑って自己紹介をした。 「ええ、相沢ですけど…俺になにか… あっ、片岡課長の紹介のっ!!」 「はい。相席いいですか?」 「ええ、どうぞ。」 席を勧めて一緒にメシを食うことにする。 「うわー、相沢さんのお弁当、めっちゃ美味しそう! 愛妻弁当ですか? 僕もこんなに作れたらいいのに…」 「愛妻というか、愛夫ですけどね。 よければ味見しますか?」 「えっ、いいんですか?ではお言葉に甘えて… うっわー、おいしーーーい! これ、絶対教えてほしいです!」 感動しきりの西條君は、僕のは恥ずかしいな… と、もごもご言いながら自分の弁当を出してきたが、いやいや、あなたのも大したものですよ。 「西條さんのも美味そうじゃないですか。 これは、あなたが?」 「はい!相沢さんのお弁当とは比べ物になりませんが…」

ともだちにシェアしよう!