168 / 516
第168話
凛を送って行き、慌てて電車に乗り込むといつもの日常が戻ってきた。
仕事モードの俺に切り替わっていく。
社員証のバーコードを通すと、いの一番に課長の元へと馳せ参じる。
「おはようございます。
重ね重ねご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。
そして、色々とありがとうございました!
遅れた分取り戻しますので、よろしくお願い致しますっ。」
「おー、もう大丈夫か?
無理せず定時に帰るように。」
課長は俺だけに聞こえるように
「今度は三人で遊びにおいで。」
と、ぱちんとウィンクをしたのだった。
パソコンを起動させると、溜まりに溜まっている資料を片付けていく。
「おっはよー!おたふくちゃん、 気分はどうかな?愛しの彼女に介抱されて腑抜けになったか?」
馴れ馴れしく肩を抱いてくる同期の秋山の手をばちーんと音が出るほど叩いて、
「黙ってろ。『おたふくちゃん』は止めてくれ。」
と顔も見ずに応対する。
「痛いなぁ。なんだよー。結婚したら、益々お高くなりやがってー。つまんねぇのー。」
「俺は忙しいんだ。お前を構ってる暇なんかないんだよ。
仕事しろ、仕事。」
「ふーん、結婚相手に本気 惚れって、やっぱ本当なんだ…」
「うるさい、自分の席に戻れよっ、邪魔すんな。」
しっしっと秋山を追い払うと、俺はこれ以上ない程 集中して、午前中に粗方の仕事をこなした。
ともだちにシェアしよう!