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*第262話
side:峰
急な出張。
本決まりの契約を交わしに行くために、俺達二人も必要だったのか?
「二人体制の担当だからねぇー、ご挨拶しっかりしてきてねー。
で、ついでに市場調査してきてよ。」
という大義名分の元…
課長の意図は…
不機嫌な秋山と共に新幹線に乗り込む。
ご親切なことに、往復の席も隣、宿泊もビジネスホテルではなく、市内から少し足を伸ばした老舗の旅館。おまけに和室の相部屋で…
課長、出張費の限度額、ご存知ですよね!?
『お願い致します』って言いましたよ、確かに。
でも…この待遇、何ですか?
これで口説き落とせと…無茶振りもイイとこですよ、課長。
あれこれ考えていると、隣から つい っと書類を渡された。
「これ、今から行く会社の詳細な資料。頭入れといて。
俺はもう叩き込んでるから。」
「あ…サンキュ。やっぱお前、ソツがないな。」
「…お前がぼんやりしてるだけだろーが。
何もなしに相手先行くつもりだったのか?
はぁ、先が思いやられる…」
大きな溜息をついた秋山が、ふいっと窓に視線をやった。
その憂いを含んだ横顔があまりに綺麗で、思わず見とれていると、その視線に気付いたのか、
「何見てんだよっ!!
しっかり資料見てろよっ!!」
と叱られてしまった。
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