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第416話
それでも、凛の処置がなかったら、蘇生は難しかったかもしれません と後で聞いてゾッとした。
凛は、何度も町内の防災訓練に参加し、実際に救命方法を教えてもらっていたそうだ。
そう言えば、SPを拘束した時の縛り方もなかなかのものだったらしい。それは守君の会社の人に教えてもらったそうだが。
この末恐ろしいスーパー園児は、そこら辺の大人よりもよっぽど役に立つ。
きっとこれからも、凛に助けられることが何度もあるんだろうな…
夕方に控えた人生の一大イベントを控えて、僅かな緊張感と期待と高揚感に胸を躍らせながら、午前中は何もせず、一週間ぶりの智の体温と感触と匂いを満喫して、ひたすらぼんやりと過ごした。
お昼は冷蔵庫を空にしたかったし、残りの野菜と冷凍の麺を使って煮込みうどんにした。
これも二人は大喜びで完食し、一週間何を食べてたんだと勘ぐる勢いの食べっぷりに、餌付けが成功したと俺は笑った。
目の前で、美味しい美味しいと笑顔で食べる二人を見ていると、この道に進んでよかった、こいつらのこの顔を見るために腕を磨いたのかもしれないと、なんだか不思議な思いに胸が熱くなった。
瞳達がこの世を去っていなかったら、凛がいなかったら、俺達は出会わなかっただろうし、同居にも踏み切ってなかった。
人生って、どこで何が起こるかわからない。
俺のせいで、一度ならず二度までも智を危ない目に合わせてしまった。
この愛おしいもの達を命に代えても守ると俺は再び心に固く誓ったのだった。
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