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第421話
智は俺の唇にそっとキスをすると、何度も愛してるとささやいた。
俺は愛おしいこの伴侶にただただ抱きしめられて、その温もりに身体も心も委ねていた。
智は、俺が落ち着いたのを見ると、蒸しタオルを作って俺の目の周りに当ててくれ、頭を撫でながら「愛してるよ」と言い続けていた。
ふと、凛がいないことに気付いた智が
「凛?りーん!どこだ?おかしいな…さっきまでそこにいたんだけど…」
かちゃり
「さとし!しょう!そろそろじかんですって!
さあ、いきましょう!!」
俺は智の腰に手を回し、もう大丈夫だ と耳元でささやいて、頬にキスをした。
智は、もう…と言いながらも、自分と俺の髪型やポケットチーフをチェックし、俺の目尻に残った涙をそっと拭ってくれた。
そして凛を真ん中に呼び寄せて三人で手を繋ぐと、チャペルへと歩を進めた。
後で聞いたのだが…
隼人さんと遙さんには、俺から昨日の一連の話をしていて、遙さんは万が一のことを考えて、知り合いの医者に別室で待機してもらっていたとか。
気を利かせた凛がそっと部屋を出たところに、事情を知っている遙さんやスタッフさんが控えていて、ドア越しに漏れ聞こえる俺達の会話にもらい泣きをしていたんだそうだ。
どうりでみんな目が赤くて、不思議に思ってたんだよ。
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