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「兄貴聞いてくれ! クラスメイトがどう考えても俺の事が好きなんだけどっ!」
「気のせいだからク〇して寝ろ」
「ちったぁ聞けよ!」
俺、笹 翔次郎(ささ しょうじろう)は、高校から帰ってくるなりリビングでコーラを飲む兄に叫んだ。
そして即座に否定される。
いやいやお前可愛い弟にそれはないだろとぷりぷり怒り訴えれば、兄はやれやれと言いたそうにしながらも聞く体勢に入った。
「まぁ、とりあえず言ってみろよ」
「クラスメイトと毎回目が合うんだ!」
「気のせいだから宿題しろ」
「宿題は今日は出てない! ……たぶん」
しかしやはり兄は翔次郎を冷たくあしらう。しかしそれには兄なりに理由があるのだ。
幼い頃から翔次郎は、すぐに「俺を好きに違いない!」と勘違いしてしまう性格なのである。
「中学の時の黒歴史を忘れたか」
「そんなもの無いし」
「忘れたどころか消そうとしてんじゃねーよ」
翔次郎の中では無かった事になっている黒歴史とは、笑顔で挨拶されたとか、居眠りしてたら「移動教室だよ」と起こしてもらったとか、体育祭でノリ良くハイタッチしてくれたとか、それこそ今回のように目が合った、などなど……。
そんな些細な事で「もしかして俺の事……!」と舞い上がる勘違い男子だったのである。
もちろん勘違いなので告白したところで「は?」と困惑されるだけだし、酷いときは「笹に告られたんだけどー(笑)」と言いふらされた。
「それでも懲りずに毎度毎度勘違いして浮かれるお前のメンタルの強さは評価している」
「それ褒めてる?」
兄の言うとおり、赤っ恥をかいたり落ち込んだりしても、また性懲りもなく勘違いできるのが翔次郎である。
だが、翔次郎ももう高校生。
あまりにも勘違いを続ける翔次郎に、兄は警鐘を鳴らす。
「末っ子でおバカなお前を『可愛い可愛い』と甘やかした俺たちにも責任はある」
「まったくだ」
「調子に乗んな」
もう察しているかと思うが、翔次郎はちょっとおバカだった。だからこそへこたれないし、そんな翔次郎を家族は可愛がっていたのだ。
だが兄はこの時、翔次郎のために心を鬼にすると決めたのである。
「よく聞け。お前は家族からしたら可愛い可愛い末っ子で魅力たっぷりのパーフェクトボーイだ」
「知ってる」
「だがな……それはあくまで壮大な家族愛に包まれたフィルター越しのお前の評価であってだな、世間一般からしたらお前は平々凡々のどこにでも居るモブでしかないんだ」
「そんなバカな──っ、薄々感じてたけど……」
だからお前に気があると感じるのは全部勘違いだから、誰彼かまわず好かれていると思うのはやめなさい。
そう兄が諭せば絶望的な顔をした翔次郎だったが、まぁなんとなくそんな気はしてたわとすぐ立て直すのがこれまた翔次郎という男である。
「あとやっぱ宿題思い出したから手伝ってお兄ちゃん」
「テメェ……お兄ちゃんに任せなさい」
そうして脱・勘違い男子を目指し翔次郎の高校生ライフが始まった。
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