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* * *
「……なぁショウ」
「んー?」
昼休み、翔次郎は正人と空き教室に忍び込み、売店で購入したパンを食べていた。
正人がスマホでゲームの実況を観ているので、翔次郎も隣に座り画面を覗き込んで一緒に観ている。
「最近ショウの雰囲気変わったよな」
「そーかー?」
ゲーム実況の配信に夢中の翔次郎は、正人の言葉に適当な返事をする。
「……前はさ、ちょっとぎこちなかったって言うか……」
「ん? なに、何のこと?」
正人がなにやら意味深な事を言っているのに気づいた翔次郎は、画面から顔を上げる。するとそこには、至近距離に正人の顔があった。
めっちゃ近いじゃん。べったりくっついちゃってるじゃん。と焦りかける翔次郎だったが、こっそり深呼吸をして平静を装った。
俺はもうこの程度では勘違いしない男なのさ、と一人笑って胸を張る。その様子を見たからなのか、正人は少し悲しそうな顔をした。
「……前、ショウにあんな事言ったのにさ、ぜんぜん普通に接するよな」
「だーから、何の事だってばー」
へらへら笑えば、正人もちょっと笑った。しかし、やはりどこか悲しそうな笑い方だった。
なんだどうした正人。腹が痛いのか。と翔次郎は心配する。
もしかして意識して欲しくて俺が特別みたいなこと言ったのにぜんぜん意識してくれないからヘコんでるんじゃ……なーんて勘違いは今の俺はしないから大丈夫だ。
「前はもっと……俺の事意識してただろ……っ」
「やっべバレて……いやいや気のせいだって!」
マジかよ、前に変に意識してたのバレてんじゃんか。だってあんときはあまりにもマサが思わせぶりな事してくるから俺の事好きなのかと思い込んじゃって……いや勘違いって分かってるけどね!
頭の中が忙しない翔次郎は焦りから声が大きくなる。そんな翔次郎の様子に、正人はまた悲しそうに笑った。
「……そうやって誤魔化すって事は、やっぱりそういう事なんだよな……」
「ご、誤魔化すってなんだよ」
「つまり、俺の事そういうふうに見れないから気づかないふりして友達のままでいようとしてんだろ? 俺が、ショウを好きなの知ってるくせにさ……」
「いやいやそんな事っ! そんなっ! そんな、そっ、え……?」
今なんか言われた? なんか、好きって……いやこれも俺の勘違いなんかな。
いやでも今『俺がショウを好き』って、いやでも……あれ?
「好きな事アピールしたらわりとすぐ俺の事意識してくれたじゃん。それが嬉しくてどんどん好きだってアピールしちゃったけどさ……最初はショウもわりと受け入れてくれてたじゃんか」
ほらまた好きって言った!
言ったよな間違いなく! え、これもかんちが──。
「俺がショウを好きなのはけっこう早い段階で気付いてたよな? でもやっぱり俺の気持ちを受け入れられないって気付いて、俺の気持ちに気づかないふりをするようになったんだろ……」
──いや、やっぱり、これは、勘違いなんかじゃなくて……──。
「それもショウの優しさだって分かってるけど、もし俺の気持ちが迷惑だったならさ、きっぱり振ってほしいんだ。なぁなぁにされると苦しいんだよ。そう簡単には諦められないかもしれないけど俺は…………──ショウ、聞いてる?」
「…………り……」
「ショウ?」
ふるふると震えている翔次郎に、正人が言葉を切って呼びかける。まるで爆発寸前のような翔次郎の姿に戸惑っていた正人だったが、その読みは間違いではなかった。
「──やっぱり俺の事が好きなんじゃねえかぁっっ!!!!」
「どうしたショウッ!?」
「俺の事好きなんだよなっ!?」
「あ、あぁ」
「よしじゃあ今日俺んち来いっ!」
「え……手土産何がいい?」
こうして翔次郎は、放課後早々に正人の手を引き帰宅したのだった。
* * *
「──兄貴聞いてくれっ!」
「だから勘違いだと何回言えばあれお友達? いらっしゃーい」
手土産もなくすみませんと頭を下げる正人の腕に翔次郎は腕を絡ませ兄に見せる。
『ほらみろ勘違いじゃなかっただろ!』とドヤ顔で胸を張る翔次郎まであと、十秒。
【おわり】
↓ちょっとおまけ
兄「ところで、ショウちゃんももちろん正人くんの事が好きなんだよな?」
ショウ「……え?」
マサ「……え?」
兄「……おい」
大丈夫。ちゃんと恋してる。
【今度こそ終わり】
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