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* * *
「おはよ」
「おう、おはよー」
翌日、今日も登校中に会った正人と一緒に翔次郎は歩く。
「ショウ、これあげる」
「あっ! これ俺の好きなプリン!」
「そうだと思った。昼に一緒に食おうな」
「もちろーん! 一生ついていきます!」
「……本当に?」
「ホントホント! プリンがあったら一生ついていく」
「俺よりプリンかぁ」
良し、とても自然に会話ができた、これも兄貴から勘違いを訂正してもらったおかげだな、と内心で翔次郎はガッツポーズを決める。いや実際にガッツポーズを決めていた。
しかしプリンをもらった嬉しさだと思われたようで、正人からのツッコミはなかった。
「ところでさ、マッ〇が今ポテト安くなってるの知ってる?」
「マジで?」
「マジで。放課後行こうよ」
「いいね! みんな誘って──」
「俺はショウと二人がいいんだけど」
「へ?」
袋に入ったプリンを見ていた翔次郎は、正人の言葉に顔を上げる。そこには、また真剣そうな目で見つめてくる正人が居た?
「……ダメ?」
「……いや全然! そんじゃ二人で行こうな!」
あっぶね! また勘違いするところだった。と翔次郎は息を吐いて自分自身を笑い飛ばす。
元々正人は大人数が得意ではない。だからいつも自分とばかりつるむのだ。
そう言い聞かせ、まったく、もしかして俺を独占したいとか? なんて思っちゃっただろ、と正人の脇腹を肘でどつく。
どつかれた正人は驚いたような顔をしていたが、驚いたのはこっちだと翔次郎はさらにどつく。
プリンをもらった時点で勘違いしかけたのに、危険だよこいつ、と。
「だが安心しろマサ。俺は生まれ変わったんだ」
「うん?」
「マサの事はいい友達だって分かってるからな!」
「………………へぇ」
てっきり笑ってくれると思っていた。しかし急にスン……っと表情をなくした正人に、翔次郎は焦る。
あれ、もしかしていい友達でもなかった?
もしかしてもしかして、友達と思ってたのも勘違い?
「あの──」
「ねぇショウ」
「は、はい!」
真剣な目で詰め寄られ、翔次郎は息を呑む。
翔次郎は、自分の言動が何か正人の癇に障ったらしい事は分かった。
しかしこんなところで正人と仲違いしたくないのにな、と身構えていた翔次郎に対して、正人はゆっくりと、教え込むように言葉を紡いだ。
「俺が人の好きな物を覚えてるのも、二人で過ごしたいと思うのも、全部ショウだけだから」
「……へ?」
思考が停止する翔次郎に、正人はにっこりと微笑んだ。
「ショウには知ってて欲しくてさ」
「……おぅ……」
翔次郎はプリンの袋を落としそうになって、慌てて強く握り直した。
* * *
「あにきーっっ!!!!!!」
「うるせぇ勘違いだっ!!!!」
「今度はマジだって! 本気でマジで本当で真実はたぶん一つだから!」
あれは絶対に勘違いじゃない! と叫ぶ翔次郎だったが、兄はいたって冷静に翔次郎へ告げる。
「ではショウちゃん、お前に問おう」
「おう」
「『好き』と言われたのか」
ふんふんと鼻息荒く興奮していた翔次郎は、兄の言葉でとたんに大人しくなる。
「……言われてない」
「そうだろうそうだろう。好きと言われない限りは可能性は限りなくゼロに近いと心に刻め」
「……ゼロではないって事?」
「ホントにポジティブだなお前は。中三の悲劇を忘れたか?」
「なんだっけ?」
「いつも笑いかけたり話しかけてくれる女子が絶対に自分を好きだとこれまでにない自信をもって告白したら『ちょっと優しくしただけで勘違いされたんですけどー(笑)』と言いふらされ女子全員から笑い者にされただろ」
「何で兄貴が知ってんだよ!」
「お前が泣きながら話してきたんじゃん」
「そうだっけ?」
翔次郎は納得できないところはあるが、確かにその通りだった。
あんなに気のある素振りを見せた女子でさえ翔次郎の勘違いだったのだ。
ましてや今回の相手は男子生徒である。同性に対して恋愛感情を持たれてるんじゃないかと考える自分がおかしいのかと翔次郎は落ち込む。
「でもなぁ……めっちゃ好かれてると思うんだけどなぁ」
「まぁお前がそこまで言うなら好きなんだろうよ」
「っ! やっ、やっぱり!」
「ただしそれは友達としてだ。なんでもかんでも恋愛にもっていこうとするのはお前の悪いクセだぞ」
「……なるほど」
こうしてまたもや諭された翔次郎は、なんとなく釈然としないながらも納得するしかなかったのだった。
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