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第18話
人の流れは途切れることなく、慣れた足取りで進むビジネスマンや家族旅行なのか、はしゃぐ子供たちとはぐれないように細心の注意を払う親たち。遠距離だろうか別れを惜しむようにハグをする人々。
光は出発ロビーの椅子に座り、行き交う人の様子をぼーっと眺めていた。
空港ではこれから始まる旅に向けて期待を胸に膨らませ笑顔でいる人もいれば、旅の疲れからかいまにも寝てしまいそうなほど体を丸めてる人もいる。果たして自分はどちらなのだろうかと光はアンジェロに買ってもらったコートのボタンを指で弄る。シルバーで形作られたそれは、ひんやりとした質感のなかで指先が凹凸に引っかかる。
冷めた気持ちのなかでなぜか引っかかりを覚える今の光の心情を象徴しているかのようだった。
冷めてしまった。探しても、自分から動いても手に入れたいものは結局手に入らない。やっぱりだ、だったら執着なんてしないほうが身のためなのだと光はここ最近熱を上げていた自分が馬鹿らしくなるのだった。
「光、チェックイン終わったよ」
景人に声をかけられるまで一点を見つめていた光。顔を上げ、じゃあ帰りますか。と立ち上がったそのとき
ちらりと光の目に映り込んだのは、茶髪混じりのブロンド、しゃんと背を伸ばしながらも物腰は柔らかそうな後ろ姿。それを見留めた瞬間、光は走り出した。
違うかもしれないなんて光の頭には微塵もなかった。確信、いや断定。疑うことなく真っすぐに彼のもとへ、冷めて固まったチョコのような背中。そこに温度のある自身の指を添えたらどう変化するのだろうか。試したことはない、溶けなかったらどうしよう。いや、溶けなかったら溶けるチョコを開発すればいい。とにかく自分は彼を手に入れたい、それだけだ。
「アンジェロ!」
はぁはぁと息を切らしながら飛びついた背中、それは驚いたように体を揺らし、後ろを振り向いた。
「え、えっ光? なんでここに」
チョコは溶けるどころかひび割れてボロボロに崩れた。それでもいい、これから湯せんしてとかせばいいのだから。
驚きの声とともに困惑気味のアンジェロの表情が見えた。それは光の高揚した表情とはアンバランスな感情として受け取れた。しかし、光はそれでも良かった。アンジェロに会えたこと、それがとてつもなく明るい希望となるのだから。
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