18 / 19
第17話
株主名簿を手に入れた光と景人は、これからNYにいるアンジェロ・バクスターの住所を片っ端から調べようと日本で言うところの区役所みたいな場所に行ってみた。しかし、
「個人情報のため教えることはできない」
と、門前払い。まあそうだよな、そうだろうと薄々、いやはっきりと分かってはいたがやってみないことには分からない! と祈る気持ちで行政機関を訪れたところで撃沈。
「これからどうする?」
立派な建物の前に整備された花壇、その縁に腰掛け沈みゆく光の肩に手を当てる。優しく慰めながら景人は聞いた。
「うん、もうこうなったらタイに行くしかないのかなって」
「タイに行ってどうするの」
あまりにも無鉄砲すぎる光の行動にさすがの景人も待ったをかける。
「タイに行ってスーツ屋の社長さんに直接聞く」
「アンジェロさんどこですかって? 他人の個人情報をそんなやすやすと教えてくれると思う?」
「だって、だってぇもうこれしか方法ないんだもん……アンジェロに会いたい、会って僕の気持ち伝えるんだもん」
とうとう泣きそうな声で駄々をこね始めた光に、彼を静かになだめることが自分の役割なのだと感じとった景人。光の隣に腰掛け彼の肩を抱いて自身の方に引き寄せた。
「そんなに焦らなくてもアンジェロは逃げないよ、きっとこの世界のどこかで元気に暮らしてる。だから一旦日本に戻ろう。日本に戻って、一から探そう」
景人の言うことはもっともである。それは光にも理解できた。闇雲に動いたところで時間と体力だけがすり減ってしまう。お金はあるから大丈夫。
そんな状態でもしアンジェロを見つけたとしてもボロボロになった自分のことをアンジェロは受け入れてくれるのか。洒落て落ち着いたものを好みそうなアンジェロのことだ、こんな突拍子もない自分になんて振り向いてくれないんじゃないか。光の思考がどんどんマイナスへと傾いていくのを、景人は彼の手を引くことで途切れさせた。
「帰ろう、光。日本にはアンジェロとの思い出が残ってるだろう。それを辿ろう一緒に。俺、とことん付き合うからさ」
景人は優しい、こんなとこまで付き合ってくれてこれ以上自分のわがままで景人の時間を奪うわけにはいかない。
光は決心した。
「うん、そうだね。帰ろう、僕たちがいるべき場所へ」
ともだちにシェアしよう!

