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それは、5月某日の早朝 ────···。
「永 さん、お久しぶりです!」
「·········え?日向 さん···?」
早朝、インターホンが鳴ってドアを開けたら優男風の男と無愛想な男がいた。
そしてアパートの目の前の道路には黒光りしている車が停められている。
二人共タイプは違うがよく顔が整っており、ダークスーツに身を包んだ姿は同じ男として永に劣等感を抱かせるほど、羨望せずにいられない抜群のスタイルである。
派手なスーツであればホストかと見紛うほどだ。
が、礼儀正しさが無ければ絶対に関わり合いを持ちたいとは思わない類の人種である。
全く知らない相手ならば。
相沢 永が住むこの安アパートには確認できるモニター等の防犯機能など付いていないし、自腹で付ける気もなかった。
そして出勤前のバタバタもあり、ドアスコープから確認もせずに開けてしまったのだ。
ガタイのいい濃茶の短髪をした優男風の方は日向篤史 という。
細身だが引き締まった体躯にセンターパートの黒髪をした無愛想な男は縣 悠生 という。
最後に会ってから随分年月は経ったが、残った面影と変わらない雰囲気のせいか永は記憶からすんなりと男たちの存在を引き出した。
「10年振りですかね」
「そう、ですね」
「お元気そうでよかった」
「日向さんと縣さんも、お元気そうで」
「お前、冴えねぇままだけど背は伸びたな。高校の時はチビの永だったクセに、俺と同じ目線なんて生意気だっつの」
縣はわしわしと永の頭を無遠慮に撫で回す。
その手を日向は払い除け、永にひたすら謝った。
「·········あの、で?お二人は、何のご用で?」
昔からこの住まいは変わらない。
知っていれば、そして会おうと思えば会える。
けれど10年振りの再会であった。
だから、驚いた。
大人しい性格の永に大袈裟なリアクションはできないが、とても驚いている。
そしてこの再会は嬉しさ懐かしさだけでなく、同時に切なさや甘酸っぱさ、恋しい気持ちも呼び起こした。
「実は、永さんに頼みがありまして」
「頼み?」
「まぁ、本来なら男のお前じゃダメなんだろうけど、これに限ってはお前じゃなきゃダメなんだよ」
「???意味が···?」
困惑する永に日向は姿勢を正し、緊張した面持ちで告げた。
「────── どうか、俺たちの姐 さんになってくださいっ!」
日向は深々腰を折り、両足を揃え、両手は横にぴったり付けている。
これは日向にとって、堅気 に向けた敬礼である。
永に対し昔から変わらない。
ドラマや映画等で知られるよくあるお辞儀はリアルではやらないようだった。
それでも緊張感があり爪先まで真っ直ぐな姿勢は、全身から永に向け敬意を発している。
こんな完璧な礼、堅気にだってなかなか出来るものではない。
そう、日向と縣は堅気ではない。
その筋の男たちである。
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