2 / 3
2.
関東相模 連合、五十嵐 組。
北九州に本家を構える暴力団。その分家の一つとして関東及び神奈川の一部をシマとし、その代紋を掲げている。
永がかつて通っていた高校の隣地域に所在していた暴力団である。
二人はそこの跡目だった五十嵐隼人 の友人で、永の高校時代の先輩でもあった。
「姐?は?なに···?」
永は益々困惑した。
当然である。
「そりゃそうなるよな。けど時間ねぇから頷いとけ」
「いや、何か分からないのに頷けませんよ。ちょっ、離してくださいっ」
強引に腕を引っ張り連れて行こうとする縣に抵抗し玄関の壁に縋り付くが、容易く引き摺られていく。
それを日向が止め、永を解放した。
「おい、縣やめろ!すいません、永さん」
「なんなんですか!」
「もう煽るか騙すか連れ去るかしてやらせちまった方かいいだろ」
「んな、ヤクザみたいなやり方···」
「正真正銘、本職 だよ」
文句あるか、とでも言うように縣は鼻で笑う。
「····················そう、ですよね。あれ、でも、縣さんは分かりますけど日向さんは美容師になったんじゃ···?」
「ああ、俺は元々期限付きで美容師やってたんです。将来は隼人の右腕になることを条件に親父から美容師になるのを許されてたんですよ。
その辺は俺自身も納得してたんで、去年隼人が正式に組長になるって決まった時、俺も美容師辞めてこの世界に戻ったんです」
「隼人さんが組長に?」
「はい。元々跡目だったんで次期組長ではあったんですが、襲名してからまだ一年も経っていません」
「隼人さん、組長になったんだ···」
永は誰に言うでもなく呟いた。
どこか感慨深く、胸に迫り上がる感情を抑えるような表情で。
隼人は高校卒業後に単身九州へと行った。
実家から離れた本家に住み込み、舎弟という立場から一から学ぶ為に。
総本山に修行入りする僧侶みたいなものである。
それと同時に、本家から通える大学に入り経済学も学んでいた。
卒業後の進路をはっきりと見据え、不安など感じさせない力強さで語っている姿を思い出した。
『────── お前も来るか?』
戯れだったのだろう。
だが、彼から訊ねられたその言葉は永の胸を弾かせた。
笑いながら見つめてくる双眸が、真剣味を帯びているように見えたから。
それは永の願望が見せたものだったのか。ただの思い違いか。
仮に本気だったとしても、永には応えられない。
だから、笑い返して隼人の視線から逃れるだけに終わった。
ともだちにシェアしよう!

