3 / 3
3.
「大学を卒業してからも本家にいたんですが、一昨年組長だった先代が亡くなり、急ぎ九州から帰って正式に襲名しました。まだ若いだとか、後見人を据え置くべきだとか納得しない身内もいますが、先代の意思でもあるし本人の強い意思でもあるし。後見人の尾田切 さんが若頭のポジションで支えてくれることでひとまずは落ち着きました」
「尾田切さん···」
尾田切湫一郎 。
先代組長、つまり隼人の父親を支えてきた幹部の一人に日向の父親、そして尾田切がいる。
組内のみならず本家からも一目置かれている大きな存在であり、組で育ってきた隼人や日向たちも彼を慕い信頼している。
永も名前くらいは隼人たちの会話から聞いてはいた。
「先代組長のこと、御愁傷様です。隼人さんは大丈夫ですか?」
「まぁ···、病気で体が弱ってはいましたが気丈に振る舞われていて、当分大丈夫だろうと思っていた矢先に病状が悪化し肺炎を起こして、そのまま···。ショックは大きいと思いますが、隼人にはやることが山程あるんで今はなんとか気張ってます」
「隼人さんのこと、支えてあげてください。俺が言うのも烏滸がましいですけど」
「いいえ、烏滸がましいなんてとんでもない。できれば永さんが隼人を支えてやってほしいんですが」
「え、なんで?俺···あ、さっきの姐さんがどうとかってやつですか?」
「はい。いきなり不躾にすいませんでした」
日向は全く不躾ではないが、内容は意味不明過ぎる。
因みに縣の行動は不躾そのものである。昔から変わらない態度はむしろ安心させてはくれるが、多少は日向のように倫理観と配慮を持ってほしいものだ。
「永さんにしかできないお仕事がありまして」
「それが、"姐さん"ですか?」
「はい。永さんにしか頼めなくて···」
「姐さんって、姐さん、ですよね?」
「はい」
「俺が?」
「はい」
「俺、男ですよ?」
「知ってます」
「女の人じゃないです」
「わかってます」
「華奢でも美形でもないし、普通の男なんですけど?姐さんなんてできるわけ···」
「俺が完璧なメイクとスタイリングで化けさせてみせます」
「つまり、女装するってことですよね?」
「はい」
「本当に俺に言ってんですか?」
「はい」
「························なんで?」
「もっともな疑問だと思うんで、時間をかけて説明させていただきたいんですが、これから場所移動していいですか?ここじゃご近所の目もありますから」
「あ、いや、でも俺これから出勤で···」
「心配すんな。お前、昨日付けでクビんなったから」
縣の言葉を理解するのに時間が掛かった。
ともだちにシェアしよう!

