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そんなある日 22
さくらside
「朔。指名だ」
「え?この時間は他の予約入ってたでしょ?」
「どうしてもお前じゃないとならない客なんだ。VIPルームへ行ってくれ」
「え?この後はどうなるの?」
「この後は代わりに日葵が行くことを了承してもらってる。だから」
「わかった」
オーナーに急な客を任されるのはここに入って直ぐ以来なかった
暫く立つと俺の予約はオープンからラストまで全て埋まっていたから
しかもVIPルームなんてほとんど使わないのに…
でもそこまでする太客であるなら粗相がないようにしないと…
部屋の前に立ち深呼吸をしチャイムを押した
『はい』
「malice de l'angeの朔です」
ゆっくりと扉が開かれる…そこから見えた顔に俺は後退り立ち去ろうと踵を返した…
何で…何で…何で…
でも力強く腕を引かれた。そして俺はその人物の胸に背中を預ける形となり抱き竦められた…
ゆっくりと玄関の扉が締まりカチャリと鍵が掛かる…
胸が痛い…苦しい…息ができない…
でもその腕の中から逃れることは出来なかった…
どうして…どうして…どうして……
「さくら…会いたかった…」
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