609 / 690

そんなある日 22

さくらside 「朔。指名だ」 「え?この時間は他の予約入ってたでしょ?」 「どうしてもお前じゃないとならない客なんだ。VIPルームへ行ってくれ」 「え?この後はどうなるの?」 「この後は代わりに日葵が行くことを了承してもらってる。だから」 「わかった」 オーナーに急な客を任されるのはここに入って直ぐ以来なかった 暫く立つと俺の予約はオープンからラストまで全て埋まっていたから しかもVIPルームなんてほとんど使わないのに… でもそこまでする太客であるなら粗相がないようにしないと… 部屋の前に立ち深呼吸をしチャイムを押した 『はい』 「malice de l'angeの朔です」 ゆっくりと扉が開かれる…そこから見えた顔に俺は後退り立ち去ろうと踵を返した… 何で…何で…何で… でも力強く腕を引かれた。そして俺はその人物の胸に背中を預ける形となり抱き竦められた… ゆっくりと玄関の扉が締まりカチャリと鍵が掛かる… 胸が痛い…苦しい…息ができない… でもその腕の中から逃れることは出来なかった… どうして…どうして…どうして…… 「さくら…会いたかった…」

ともだちにシェアしよう!