628 / 690

新たな旅路 7

「あーあ…やっちゃった…すいません!!蘇芳さん天音さん!!あの子怒ると口悪くなって…投げ飛ばしちゃうんです…小さい頃から沢山格闘技習わせてて…全て…段持ちで…」 母の声に自分がしたことを省みる…どうしよう…かなり失礼なことを…nadesicoにとって重要な人なのに…でも… 「あははっ!!やられたねぇ。みー!!あはっ」 美陸さんの母である天音さんが盛大に笑う。あれ?怒ってない…? 「び…っくり…した…」 これで美陸さんも引くだろう…それなのにまだ気持ち悪い顔で俺を見ている美陸さん…あまりにも腹が立って床に転がる美陸さんをイライラしながらを見下ろした。 そして…また失礼なことを吐いてしまうが止められなかった… 「近寄るな!この…クズ!!」 つい足蹴にしてしまった。流石に美陸さんがうつ向いたから流石にこたえたかな…そう思ったのに… 「…き…好き!」 「はぁ!?」 「ギャップ…すげー…好き!好き!大好き!!」 「寄るな!!離れろ!!」 更に気持ち悪い顔で立ちあがり躙り寄ってきた…気持ち悪い… それを見て大人たちが話してる。 「美陸…あいつM?」 「あははっ!!撫子たじたじじゃん!!初めてみた!!あんな撫子」 遅れてきた父がその輪の中に歩み寄る。 「あ!莉音さん!いらしてたんですね。…にしても笑いすぎですよ」 「いやぁ…だってさぁ…外では完全猫被りなあいつが…くくっ…素が出てる…あはっ…あはははっ!!」 美陸さんの気を逸らせるのはきっと父だけだ… 「父さん!!笑ってないでこいつどうにかして!!」 「えぇ。もっと見たい!!」 本当に愉快そうに父が言う。本当に…勘弁して欲しい… 「どうにかしてよ!!」 「んもー…仕方ないなぁ…美陸くん!!これ!あげる!!」 父が放った小さな包み紙。それを受け取る美陸さんは表情を変える。 「これ…これ…」 「うちの新商品!まだ発売前だよ。味見して?」 美陸さんは全く違う顔になる。子供みたいな好奇心一杯の顔。不覚にもそれを可愛いと思ってしまう。 そしてゆっくりと小さな包み紙を開ける指先。繊細でしなやかな…その指先で上品に中の菓子をつまみ口へ運ぶ。その所作は先程の子供みたいな顔に艶も足され…。 やっぱり…この人綺麗だ…そう思わざるを得ない… そっと目を閉じ舌で感触をじっくり味わう姿…ただ食べているだけ…それだけなのに…目が離せない…そして飲み込みゆっくり目を開けたときに見えた青い瞳…吸い込まれそうなほど澄んでいる。 そして口角を上げ顔を上げる。凄い…ここにいる誰もが魅了される…そんな表情だった… 「莉音さん!」 さっきまで僕を追い回していたのが嘘のように父の元へ向かう 「これ。美味しい!パッケージは?どんな予定?」 そう話す美陸さんは今度はプロの顔… 「今日は持ってきてないんだ。だから次の予定教えてくれる?」 「はい!」 この短時間でコロコロ変わる美陸さんの表情に呆然としていた。あぁ…この人が… 「撫子?どうしたの?」 「あいつが…あいつがうちのお菓子の…産みの親…」 改めて口にすると非礼があったと認めるしかない… 「まぁ…そう言われればそうだね」 「凄い…人なんだ…なのに…僕…」 詫びなければ… 「…撫子…大丈夫だよ…」 そう思ったのに… 「なーちゃーーーーーん!!!!」 「うわっ!」 父との話が終わるとまた僕のもとへ戻ってきた。 何なの…この人…同一人物だよね…何でこんなに変わるの…怖い怖い怖い…

ともだちにシェアしよう!