659 / 690
新たな旅路 37
美陸が寮生活を始めてこれまで見えてなかった部分が見えてきた
「ねぇ。美陸。お菓子は上手なのに他のはどうしてこんな風になっちゃうの?」
「え?お菓子は分量通りやった方がうまく行くけど他のはアレンジした方がうまくなるじゃん!」
「…しなくていいです…ふつうに分量通りでお願いします」
「えぇ。なーちゃんに手料理振る舞うのに普通なんて」
「いや。普通がいい。それか僕が作る」
「だめ!キッチンぐちゃぐちゃになっちゃうでしょ」
「だったら分量通りで」
「いや!」
家事全般得意な美陸。特にお菓子作りに関してはプロ並み。それなのに何故かお菓子以外のものになると話は別で…もう何度お腹を壊したかわからない…
「もう。美陸のご飯食べない!」
「え…そんな…」
「もう寝るね。おやすみ」
部屋に入って布団を被る。我ながら大人げない…頑張って作ってくれたのにこんなの…
でも…何度もお腹壊してるから流石にきつい…
僕は料理と言う料理は出来ないからこれまでは出来合いのものを食べてた。
だからあったかい料理は凄く嬉しくて…お菓子は何度ももらって食べてたから美味しいのはわかってたから安心して食べたらこれまで経験したことのない不思議な味で…
頑張って無理矢理食べたその夜お腹を下して…
一度ならいい…でもこう何度も続くともう限界…
「なーちゃん?なーちゃん?寝た?」
暫くしてやってきた美陸。今顔を見たら嫌なこといっちゃいそうだから狸寝入りを決め込んだ
「なーちゃん…」
きっと隣で落ち込んで泣きそうな顔をしているんだろうな…そう思うけど顔を出すことはできなかった
「ごめんね…なーちゃんに美味しいの食べてもらいたくて…やり過ぎちゃった…ごめんね…」
今日は自室で眠るのだろう部屋を出ていき扉が閉まる音を聞いて顔を出した
「ごめんね。美陸…」
ともだちにシェアしよう!