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クリスマス
美陸side
「なーちゃん」
「ん?何?」
「クリスマス…一緒に過ごせる?」
「クリスマス?…ごめん…短期バイト入れちゃってるんだ…だから」
「そ…っ…か…ざーんねん!じゃあ俺は実家に帰ろうかな」
今年のクリスマスは連休で冬期休暇の開始と一緒になってる。
今までいた学校では年間の〆のイベントでクリスマスパーティーが毎年必ず開かれ強制参加だったから一人で過ごすことはなかった。
クリスマス…恋人と過ごす…凄く憧れてたけど…なーちゃんはイベント毎には全く興味がない。
記念日とかもこだわらないし誕生日も特になにもしなかったって言ってた…
ちなみに俺はクリスマスイブが誕生日だけどきっとなーちゃんは知らないんだろうな…
「美陸?どうしたの?」
「ん?実家に帰ったらなーちゃんに会えないから寂しいし…やっぱりここにいようかな…って」
「…あー…んならさ果林と過ごしたら?果林は毎年冬期休暇は帰省しないんだ。果林の家かなり遠くて。確か何もなかったはずだから。連絡してみるね」
俺の都合は聞かずその場で電話を始めたなーちゃん。
「もしもし。果林。クリスマスは何してる?うん。ん?ちょっと待ってね。美陸。果林が変わってって」
「もしもーし。かーくん?」
『みおちゃん。クリスマス暇してるの?』
「実家に帰ろうか寮に残ろうか悩み中」
『俺ねクリスマスケーキ好きなの。毎年ワンホール注文するんだけど今回サイズ間違っちゃったから一緒に食べてくんない?』
かーくんは甘いものが大好き。ワンホール買っちゃうのもわからなくない。
「いいの?一緒に食べて」
『助かる』
「じゃあその日かーくんのお部屋にいけばいい?同室者の人平気?」
『うん。その日から帰省してるから大丈夫。問題ないよ。二人でクリスマスパーティーしちゃお?』
「うん!じゃあ、何か作ってくね」
『はいはぁい!時間はまたね』
「うん。またね」
通話を終了しなーちゃんに目を向けるとふわりと笑った。可愛い
「ごめんね。美陸」
「いいんだよぉ。楽しみだなぁ。なーちゃんその日は何時にバイト終わるの?」
「わかんない。終わり次第連絡するね」
そうして当日。なーちゃんは朝も早くから出掛けていった。
部屋のことをしてクリスマスだからって浮かれて用意したなーちゃんへのプレゼントをそっとクローゼットから取り出して息を吐く。なーちゃん寒がりの癖にマフラーしてなかったから手編みのマフラーを作った。
「これ…今日渡せるのかな?…」
なーちゃんのバイトは何かまでは聞かなかったけど朝早くからかなり遅くなることもあった。
「…なーちゃん…」
昨日も疲れてるのに沢山愛してくれた…でも…今は隣にいない。
「誕生日…なのにな…」
おめでとうの言葉なんてないしメリークリスマスだってない。
「…誕生日って伝えていたらおめでとうの一言くらいあったのかな…」
結局言い出せなくてそのままになったことを悔やんだ…でも伝えたところでそれがあるかもわかんない。
虚しくならなくて済んで良かったんだ…そう自分に言い聞かせた。
そして約束の時間になりかーくんの部屋に向かうとわざわざ飾り付けてあって美味しそうな料理が沢山並んでた
「すごーい!!これぜーんぶかーくんが作ったの?」
「実は料理が大好きなんだぁ。披露することあんまりないけどね」
そして二人きりのクリスマスが始まった。
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