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第89話
そしてまた季節が巡り凍える冬は過ぎ去りポカポカと暖かい日差しの俺が大好きな季節がやってくる。
朝陽さんは問題なく某有名国立大学へ進学。俺は又1つ学年があがる。
3年に上がるときはクラス替えはないので隅田はもちろんいる。
相変わらず隅田は人に囲まれて笑っていた。
俺も相変わらず例の格好で大人しく座っていた。
今年も代表挨拶は俺でそしてまたいつものような視線を向けられた。
いつものことで慣れてはいたので何も思わなかったのだが今年は何か違う視線を感じた気がした。
その意味が、わかったのはその日の放課後だった。
帰り際新入生が俺の元へやって来た
「片桐先輩!!」
まさか自分に用があるやつがいるなんて思わなかったから何度か聞こえない振りをした
靴を履き校門へ向かう。すると後ろから駆けてくる足音が聞こえる。
「片桐先輩!!片桐 星先輩!!」
フルネームで呼ばれようやく自分だと解り振り返った。
「…」
こいつ何者…?
そこには男にしてはかなり小柄で大きな目は小型犬のように多少潤んでいて、その目で俺を見上げる新入生がいた。
少し走ったせいか、息が上がり肩が上下していた。顔は赤らんでいてまるで情事の後のようなその姿を一瞥する
「片桐先輩。僕に勉強教えてください」
「…」
「1年C組 宮部 愛斗です」
「…」
「え…っと…俺…あっ…僕には兄が二人いてこの学校の卒業生で。その兄達からあなたのこと聞いていて一度会いたいと思ってここに入学したんです」
「…」
ここに入った時点で十分学力もあり…て言うか確かこいつは新入生代表挨拶してたやつ。
俺に教わることなんて無いだろう…
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