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第147話

朝陽side 今日はせいくんも十夜も仕事で側にはいない。 これまで何もなかったので今回も何事もなく1日が終わるだろう…そう思い講義を受けていた。 いつも側にいる者がいないからか色々な人に声を掛けられてしまう。 最後の講義の時隣に誰かが座った。 見覚えのあるその人は人の良さそうな笑顔で話しかけて来た 「華稜院くん。俺の事覚えてる?」 高校の時隣のクラスにいた人だとわかる 「覚えているよ」 生徒の顔はある程度覚えていた僕は返事をする すると嬉しそうに笑う彼は柔らかい感じの人だった。 隣でいつもと変わらず講義を受け帰宅しようと荷物をまとめ、彼に挨拶をして立ち去ろうとする。 「折角だから一緒にお茶でもどう?俺話してみたかったんだよね」 変な空気もないし悪い人でもなさそうだし高校時代も目立って何かしている風でもなかったので警戒心も無くついていくことにした この時僕は気付くべきだった…彼の瞳の奥に潜む深い歪んだ思いに 大学から少し離れた昔ながらの喫茶店には大学の人も見受けられず黙々とマスターがコーヒーを淹れていた。 雰囲気のいいその場所に今度はせいくんと来ようと思い思わず笑みが溢れていた。 「やっぱ華陵院くんはすごく綺麗な笑顔だね」 「そうかな?」 「まぁ姫だしね」 「何それ」 「高校の時みんなに呼ばれてたの知らない?」 「さぁ?知らない。でも僕は男だよ。姫って…」 「それだけ綺麗って事だよ」 曖昧に返事をする。彼は落ち着いたトーンで色々話してくれた。随分と時間が経ち帰る前にトイレに向かう 「ちょっと行って来るね。先に帰っちゃってもいいから」 一声掛け席を立つ。 席に戻るとまだ彼はそこにいた 「あれ?待っててくれたの?ごめんね」 少し残したコーヒーを口に含む。途端意識が遠退いた

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