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第277話
朝陽side
海外で撮影してる話題の新作映画
誰もが楽しみにしていた
僕もその中の一人だった
ある日出演者が倒れたとのことで代役の依頼が来た。
倒れた彼からも連絡が入っていた。
彼は涙声で僕に懇願した
どうしても僕にお願いしたいと言ってくれた。
その期待に応えるため了承し渡英した
そこにいた数々の名優よりも輝いているように見えるせいくんを見つけた
やっぱり僕はせいくんが好き…でも…
ずっと見て来たからすぐにわかった…
彼の中にもう僕はいないって…
苦しい…痛い…でも同時に解放してあげなくちゃと思った
優しいせいくんはきっと自分からは僕に別れて欲しいなんて直接的には言えない
だから僕は…
最終日監督さんに言ってせいくんと二人にしてもらった
あの日からずっと首から下げていたリングをせいくんに返した
離したくないな…また抱きしめて欲しいな…キスして欲しいな…繋がりたいな…
でもそんなこともう叶わない…
せいくんとても幸せだったよ…ありがとう…
せいくんと過ごせて良かったよ…
せいくんに別れを告げ背を向けた…。
もう振り返らない…
せいくん…幸せになってね…
ホテルの部屋でひたすら泣いた。
せいくんにはばれていなかったはず…
僕も演技上手になったでしょ…?
帰国の時間は僕はみんなより早い便だったから幸いせいくんには会わなくて済んだ。
飛行機の中で窓の外を見て一雫の涙が溢れた。
そっと差し出されたハンカチ。
何故かそこに十夜がいた
「学会がこっちであったんだ。お前と会うなんて思ってなかったけど」
十夜がそっと手を重ねてくれた
「せいくんと仕事で一緒だった…もう…せいくんには僕の影なんてなかったから…別れた…」
「そ…朝陽…泣いていいよ…我慢しないで。無理して笑わないで…」
また十夜に助けられた…十夜にはもう頼らないと思ったのにな…涙が枯れるまで泣いた…
十夜…ありがと…
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