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第281話

朝陽side 仕事が終わり息を吐く。 「華稜院さん。お疲れ様です」 「お疲れ様。霞くん。さっきの歌番組の収録見てたよ」 「見てくれてたんですか?ありがとうございます」 彼は同じ事務所の後輩で霞 桔梗くん。彼の歌唱力はものすごくすぐに人気に火がついた 可愛い顔から出たとは思えない圧巻の歌声は賞賛されていた。 「ため息なんてついてどうしたんですか?」 「ちょっと疲れちゃってるかも」 「あんまり無理しちゃダメですよ。今度オススメの場所あるんで一緒に行きましょうね」 「うん。ありがとう」 霞くんと別れると随分と前に土門さんたちといったバーへ足を運ぶ。 初めてあそこに行った時から何か歯車が狂ってしまった… あの日美那がいなくなったことを知り…十夜との生活始まったんだな…そして…せいくんと離れた…あの日がなければ…なんて思ったってどうすることもできない… 時が巻き戻せたらどんなにいいだろう…何度思ったかわからない… そこで土門さんや蘇芳さんと会うことも少なくはなかった 「おぉ!朝陽くんおつかれ」 「蘇芳さん。お疲れ様です」 「また一人?誘われること多いでしょ」 「まぁ…誘ってはもらえるんですけど信頼している人としか落ち着いて飲めないんです。気使っちゃって」 「俺らは信頼されてるって思っていい?」 「当然です」 「ありがと。最近どうなの?いい人見つかった?」 「いいえ。仕事忙しくって…それに…」 「まだ星夜のこと引きずってるんだ?」 「はい…こんなに自分が女々しいとは思ってなかったです」 「まぁ…星夜はいい男だもんな。今カイと付き合ってるんだって?」 「はい。とても幸せそうですよ。先日カイさんのお店の近くで見かけたから…声かけれなかったですけどね」 「朝陽くんもう十夜とはヨリ戻さないの?十夜といる時もとてもいい顔してたから。十夜まだ君のこと好きでしょ?」 「十夜は幼馴染なんで家族みたいなものですよ。もう十夜には頼れないです。どれだけ傷つけたかわからないし十夜には僕なんかよりずっとお似合いの人がいるはずだから」 「そうかな?」 「そう思います。僕じゃダメだと思うんです。僕には勿体無い人ですよ。十夜は」 「そんなものかねぇ」 「あれぇ?華稜院さん」 声のした方を振り返るとさっき別れたばかりの霞くんがいた 「蘇芳さん。土門さん。お疲れ様です。皆さんここよく来るんですか?」 「もう随分長いこときてるよ」 「俺稀城さんに紹介されて初めてここにきたんです」 「そうなんだね」 何となくゆっくり飲む気が失せて帰宅することにした 「僕はこれから予定があるからこれで。またですね。蘇芳さん。土門さん。霞くんごゆっくり」 「華稜院さん!」 聞こえないふりで店を後にした

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