夕燈side もしかすると十夜は来ないかもしれない…そんなことが今日は仕事をしている間中過って仕事に身が入らずみんなに心配をさせてしまった 「オーナー。体調悪いですか？」 「大丈夫。ありがとう」 俺らしくない…これまで一度もこんなことなんてなかったのに… 「オーナー。立野さんいらっしゃいましたよ」 「もうそんな時間かぁ。店宜しくね」 「はぁい」 「お疲れ様。莉音」 「お疲れ様です。夕燈さん」 いつもと変わらない光景。違うのは今目の前にいる莉音への感情が変わったことくらい。 「何か浮かない顔ですけど何かありました？」 「そんな顔に出てる？」 「いつも同じ表情で冷静な夕燈さんにしてはですね」 「俺さ…好きな人出来たかも」 「夕燈さんならその人のこと落とせそうです」 「お前さえ落とせなかったのに？」 「俺は高校の頃あなたのこと好きでしたよ」 「えっ！？両思いだったってこと？」 「ですね…」 「何だそれ…」 「お互い遠慮しちゃったんですかね？」 「だってお前ずっと誰かしら恋人いたじゃん」 「夕燈さんもでしょ？」 「その時どちらかが言ってたら今どうなってたんだろうな？」 「ですね…俺は桔梗とは出会えてないかもしれませんね」 「俺もユルーくならなくて良かったかも」 「いやいや…既に緩かったでしょあのときから」 「失礼だなぁ…だったらお前もそれに乗っかれば良かったじゃん」 「嫌ですよ。好きな人なのにその他大勢の人と同じなんて」 「まぁ…今更だよね」 莉音の言葉に多少動揺はしたもののそれももう俺の中では遠い日の記憶と言うだけで今更莉音が欲しいなんて思わなかった… あのとき俺達が付き合っていればもっと違う今があった。 幸せだったのか？不幸せだったのかそんなこと誰にもわからないけれど…