473 / 690
灯火 33
宮部に場所を告げ送ってもらう
「大丈夫ですか?病院とか」
「俺一応医者だし大丈夫。それに今は人前に晒したくない」
「わかりました」
車に乗り気が抜けたのか意識を失った夕燈さんの髪を撫でた
「神楽坂さん」
「十夜でいいよ」
「十夜さんもゆっくり休んでくださいね」
「ありがとう」
「ここですよね?」
「うん。ありがとう。じゃあ」
宮部を見送り部屋に戻り風呂にいれてやる
「うっ…あっ…」
「ごめんね。夕燈さん」
「十夜…」
「気がつきました?すいません。勝手に入れちゃって…お風呂浸かりますか?」
「十夜は?一緒に入ってくれる?」
「はい」
一緒に湯船に浸かり夕燈さんを後ろから抱き締め髪に唇を寄せた
「十夜?」
「はい」
「あの…俺…もう…」
「夕燈さんだけが欲しいって俺言いましたよね。あれ本当ですから。答えは急ぎません。これまでの方が夕燈さんがいいのならそうします」
「え…と…あの…」
「朝陽じゃなくて夕燈さんの側にいたいんです…」
「それって…ほんと?」
「嘘なんて俺言います?」
「言わない…」
「ふっ…まぁ今日は…あれだしまた今度ね?あがりましょ」
「うん」
答えが怖くて早々に風呂からあがった
服を着て先にリビングへ戻っていると夕燈さんが後ろから抱き付いてきた。
俺より少し小柄で華奢な腕…痛々しい痕がみえ顔を歪ませた
「十夜…俺でいいの?俺は…あの日…朝陽になったあの日からお前のことが好きだった…お前と一緒にいたくて朝陽になるって言った…でも…お前が俺を見ているのならすごくうれしい」
少し震えながら告げられた言葉を噛み締める
そんな思いでいたなんてわからなかった…どんな気持ちで朝陽になるって言っていたんだろう…気持ちを思うと苦しい
「朝陽を越えられるなんて思ってなかったから…あ…越えてな…っ」
言葉を紡ぐ夕燈さんの唇を塞ぎ口内を荒らした
二人の間を光の糸が結ぶ
「もう…越えてます…一緒に住み始めるより少し前から…でないと一緒に住もうなんてこと了承しません。夕燈さんが好きです。でも…怖かった…夕燈さんにとっては俺はたまたま近くにいただけの人ですから…お互いがお互いを慰めあうためだけの関係だったから…夕燈さんの思いなんて知らなかったから…夕燈さんは朝陽で俺に抱かれてるし…俺は夕燈さんが抱きたかったのに…言えなくて…ずっと苦しかった…俺にはもう夕燈さんしか見えていないのに…夕燈さんのお陰で俺はやっと朝陽と言う存在から解放された…これは強がりでも何でもなくて…」
「十夜っ」
「何泣いてるんですか?」
「だって…こんな日がくるなんて思いもしなかったからっ…だからっ…」
「夕燈さんが好きです」
「俺も…俺も十夜が好き」
「はぁーっ…良かった…これで堂々と恋人って言える…ずっと…宣言したかったんです…」
「ばか…」
「体辛いでしょ?もう休みましょうか…?」
「やっ…抱いて…」
「でも…負担が…」
「やだ…今十夜が欲しい…ダメ?」
「はぁ…辛かったら絶対言ってくださいね」
「うん…」
ともだちにシェアしよう!