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灯火 32

拘束が解かれた夕燈さんは自身で立っていられない 男が運ぼうと手を伸ばしたのを静止し自ら抱き上げた 奥の部屋へ通されドアが閉まったのを確認すると鍵をかけた。 先程とは打って変わって西洋の王宮の一室のような豪華な部屋。 脇には様々な道具が置いてある ベッドへ夕燈さんを下ろしそっと髪を撫でながら語りかける 「夕燈さん。聞こえます?十夜です」 「…」 夕燈さんはカタカタと震えている。隣に横になり抱き締めても震えが止まらない 「夕燈さん。明日一緒に遠出するんでしょ?こんなとこで何やってるんですか?一緒に帰りましょ」 そっとキスをし抱き締める力を強くした 「ねぇ。夕燈さん。こっちをみて?俺だけを見て」 気付けば震えは収まり少しずつ瞳に光が戻ってくる 「とぉ…ゃ…」 「そうですよ。夢じゃないですからね」 少し強めに夕燈さんの肌へ吸い付く。 「っ…十夜…十夜」 「はい。良かった。見てくれましたね」 「…っ…ごめん…今日の約束破っちゃって…」 「本当に…連絡くらい寄越してくれたらもっと早く気付けたのに…」 「ごめっ…俺…また…汚れてっ…もう朝陽になれない…ごめん…」 「いいですよ。夕燈さんのままで。もういいですよ」 「ゃ…ゃだ…もう…いらない…?朝陽になれない俺なんていらない?」 「はい。いらないです」 大粒の涙を流しながら胸に顔を埋めた 「やだ…やだ…」 「夕燈さんは夕燈さんのままで俺の側にいてください。朝陽になる夕燈さんはいらない。夕燈さんだけがいい」 「ふぇ…ぇ…?」 「聞こえませんでした?俺はあなた自身がほしいです。俺だけ見てください」 急に部屋のドアが開けられた。 男たちが雪崩れ込む。宮部たちだ。そして手際よく皆を拘束した。 一人の男が俺を連行しようとする。 「何やってるんですか?その人たちから手を離しなさい」 「しかし…」 「俺が全責任を負う」 凛とした宮部の声が響き男が離れていった。 「先に行ってて」 「はい」 皆を見送ると宮部がこちらへ足を進めた 「ご協力感謝します」 深く礼をした 「神楽坂さん。外に俺の車止めてあるんで送って行きます」 「ありがとう」 まだ立てない夕燈さんにコートを掛け運んだ

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