547 / 690

道標 その後

あの日…遥さんに謝った時振りに遥さんの家を訪れていた。 相馬さんとの曲が遥プロデュースということに決まったからだ あの日から俺は変われただろうか?遥さんに認めてもらえるアーティストになれたのだろうか… 考えれば考えるほど緊張感が増していく…言葉も何も発することが出来ずに立ち竦んでいた 「お久しぶりです。稀城さん。そんな硬くならないでいいですよ。あの日のことはもう過去ですから」 その言葉にやはり遥さんは器の大きい人だと思う。 まさか監督が遥さんの古くからの知り合いなんて知らなかった 俺はずっと持っていた疑問を投げ掛けた 「俺がいうのもあれですけどよく引き受けてくれましたね」 「こんなこと言うのは失礼かと思いますが以前のあなたは、よく努力をされ技術は身についていて非常に上手かった。そこは尊敬に値します。 でもそのうまさの中に深みを感じることが俺には出来なかった。 俺は自分の曲が最大限に活かしてもらえる人に書きたい。 俺は売れる曲を書きたいんじゃない。自分が納得し気持ちよくなれる曲を書きたい。 俺は自分勝手で自分本位の人間ですからね。 あの後あなたを含めたメンバー全員が以前より更に努力を重ね何でも一生懸命に取り組んできたんじゃないですか? 以前より数段魅力が上がり俺ももう一度あなたに書きたいと思ったんです。 だからこの話が来て正直嬉しかったんです。 相馬さんは俺が唯一自ら好きで書いていた人です。そんな2人の曲ですから断る理由なんてないでしょ?」 「…」 「なので逆に俺の歌を歌って下さいと頭を下げたいくらいです」 そう言って頭を下げた遥さんの姿に涙が出そうな程嬉しくて… 「早速、息を吹き込んでくれませんか?俺の大切な子供に」 「はい…ありがとうございます」 あぁ…目標だった相馬さんと尊敬してた遥さんと一緒に歌える… それが嬉しくて…歌詞も噛み締めながら思いを込め歌う。 この声が皆に届きますように…そう願って… 合わさる相馬さんの歌声はとても心地よく昇っていく… 本当に…俺は…幸せだ… 「すごい…」 相馬さんが満面の笑みでそう言うから…遥さんが優しく見つめてくれるから…俺は本当に…

ともだちにシェアしよう!