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揺れる 10
「朝陽。星夜くん。おかえり」
「父さん。ただいま」
「話しがあるんだろ?仕事?」
「いえ。兄さんたちも聞いてください」
「じゃあ行こうか」
いつきても広すぎるリビングでみんなと向かい合った
「あの…僕…妊娠しました」
「妊娠…!!おめでとう!!」
「うわぁ…あーちゃんが始めにママになるのか…可愛いだろうな…」
「よかったねぇ。お仕事は?」
「お休みします。せいくんもそれでいいと言ってくれたから」
「そっか。無理しないようにねぇ。あ…そうだ…松美さん呼んで」
暫くすると一人の初老の女性…
彼女のことはよく覚えている。初めてここにきたとき世話をしてくれた人だ
「朝陽様。…あーちゃん…お久しぶりね」
「松さん…お体の具合は?」
松美さんは数年前に体調を崩し華陵院を去ったと聞いていた
「もう。すっかり元気よ」
「良かった」
「お松さんはねご自身の子供さんが7人いらっしゃるんだ。お孫さんが20人だったかな?子育てのプロだよ。何かあったら相談なさい。今はこの屋敷に教育係として入ってもらってるから」
「ふふふっ…あーちゃんがママになるのね。私も沢山お手伝いさせてもらうわ…あ…そうだ…竹世ちゃんにも連絡していいかしら?」
「竹世…お祖母ちゃん…」
「ごめんなさいね。ずっとお話ししていなくて…竹世ちゃんはね…実は私の大親友なの…だからあーちゃんがここに来てからは私の方からずっとあーちゃんのこと連絡していたのよ。相変わらずお元気だから…も
う随分と時が過ぎてしまったけれど…会ってみたい?」
「はい…!会いたい…です…父さん…会ってもよろしいですか?」
「ふふっ…勿論だよ…すまなかったね…本当は朝陽がここにきたその時からここに一緒に来てもらわなければならなかったのに…私もあの時はそこまで…余裕もなくて…君のお母さんに良く似た意志の強い美しい方だよ」
あの日から…一度も会っていなかった大好きなお祖母ちゃん…
せいくんに会わせてあげたい…
せいくんを見詰めるとニコリと頷いてくれた。
「よし!盛大に祝おう!準備手伝ってくれるかい?皆」
「はい」
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