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揺れる 22
「痛いっ…せいくん!痛い…陣痛きたかも…」
予定日の2日前定期的なお腹の張りと痛みから眠っていられなくて病院へ向かった
すぐに分娩室へ通される
「ご主人も背中さすってあげてください」
せいくんがそばにいるのがとても心強い
「痛いっ…痛いよお…」
でもこの子の方がずっと頑張ってる…
「朝陽さん頑張って」
それから数時間。家族みんなが集まる。
「あーちゃん。もう少しよ」
「お祖母ちゃん…痛いよ…」
「うん。うん。赤ちゃんが頑張ってる証拠よ。ほら…もうすぐ会える」
うちの父とせいくんのご両親は廊下でずっと待っていた
それからさらに数時間。そのときが来る
「あぁぁぁぁぁ!!」
「ふぇーん…ふぇーん…」
弱い弱い鳴き声にみんなが不安な顔をする
「せんせぇ…赤ちゃんは…」
「大丈夫。大丈夫ですよ。でもね男性の出産の場合は念のため直ぐにこちらで預かることになっているんだよ。だから…その前に一度抱いてあげて。」
「はい」
胸に置かれた赤ちゃんはとても温かく僕の胸にすり寄ってきた。
「また後でね」
少しの不安と喜びと入り交じる…早くもう一度抱きたいな…
後処理をしてもらい車イスで病室へ運ばれる。
みんなが労いの言葉をかけてくれた。分娩室に入って約20時間がたっていて体力の限界…そのままで眠った
「朝陽さん。頑張りましたね。お疲れ様でした」
「ん…ありがと。せいくん」
「もうすぐここに来ますよ。検査結果問題なかったから」
「よかったぁ…」
トントン
扉がノックされる。
「はぁい」
「相馬さん」
数時間ぶりの対面がとても嬉しかった。
「何かあれば遠慮なく呼んで下さいね」
「ありがとうございます」
小さな小さな命を抱きながら二人で微笑んだ。
fin.
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