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草食組寮 緑青

全寮制であるこの学園は肉食組と草食組に二分されているが、もちろん寮も完全に分離されている。 雪は草食組寮、通称緑青(ロクショウ)と呼ばれる寮で生活していた。 寮内にある部屋は、全室二人一組で使用する。トイレ、風呂などの設備も各部屋に整えられていて日常生活に不自由することはない。 その他、大風呂やテレビの設置された娯楽部屋、購買、コインランドリーやメニュー豊富な食堂などもあり、基本的には学園の外に出る必要がないほど充実している。 それもこれも山一つ切り開いたような広大な土地の上にあるからだ。 そんな寮緑青で雪は同室の優也と生活を共に過ごしている。 「ねぇ雪、体育祭の個人競技、何に出るか決めた?」 「ん。俺は100メートル走か障害物競走かパン喰い競争」 そこまで言って雪が、ふぁぁ……と欠伸をする。 雪の瞼は今にも落ちそうだった。 「全部瞬発力系だね」 「それしか得意なものがねぇんだもん。優也は?」 「僕は個人競技より団体競技の方が向いてるんだよなぁ。けど、取り敢えず全員個人競技の希望は出さなくちゃいけないでしょう。悩む……」 部屋の角に設置された二段ベッド。一段目は優也、二段目には雪。 既に消灯の22時を過ぎていて、目を瞑れば今すぐにでも夢の国へ行けそうなほど眠い。 特に雪は夜更かしが苦手だった。 体は小さいがよく動く。その割に小食気味で、いま一つ体力面が頼りない。 だからなのか夜は横になったが最後、そこが娯楽部屋だろうが床の上だろうが、どこでもすぐに寝てしまう。 22時を過ぎてもこうして優也と喋っていることなんて極稀なことだった。 「んー……、ゆうゃ……明日悩も……」 「うん。おやすみ」 雪の小さな寝息を聞きながら、優也もまた目を閉じた。 雪が夜更かししたのには訳がある。 今日あった出来事に興奮していたからだ。 雷太と紅、肉食組の生徒会役員が、雪達草食組と同じテーブルを囲んで食事をしたことが雪を興奮状態にさせたのだ。 しかしつい先日まで雷太が肉食組の会長だということすら知らなかった雪である。 他の生徒達のようにミーハー心で興奮した訳ではない。 雪が肉食組の生徒達に一矢報いる手助けをしてくれたことで、雷太に対するイメージが180度変わったことも理由の一つだ。 自分達草食組の肩を持ってくれるなんて思ってもみなかったし、胸のつかえが取れてスッキリとした気持ちになれた。

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