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第161話
わかっているのは、雷太のことが好きだということ。いつの間にかこんなにも愛してしまっていたということ。
ただそれだけだった。
ぐんぐん高みへ押し上げられて、雪の熱が弾けた後、すぐに雷太自身も吐精した。
雪の中で雷太の象徴がどくどくと力強く脈打っている。
それを受け止めることが、とても、とても幸せだった。
「ん……、ん……」
雪は口付けを交わしながら、雷太にぎゅっと抱き締められた。
湿った肌と肌が密着して吸い付いて、まるで本当に一つになったかのように錯覚する。
雷太が愛おしい。大好きだ。胸の奥がこそばゆい。
雪はこの上なく押し寄せる多幸感の波に飲まれた。
全身に力が入っていた雪の体は、事を終えてから悲鳴を上げた。
「すっごい筋肉痛……。特に腕と腿がいってぇ」
部屋のシャワーを借りてパジャマに着替え、雪は雷太のベッドに腰かけていた。
ほっと一息つけて気持ちも落ち着いたからか、雪の黒い長耳も下へ垂れている。
「雪、ホットミルク」
「ありがと」
雷太からホットミルクの入ったマグカップが手渡されそれを受け取りゆっくりと口へ運ぶ。
窓の外は相変わらず雪がちらついていた。
「ホワイトクリスマスだな。俺、恋人とのホワイトクリスマスってやつに憧れてたから、今日それが叶って嬉しい」
「あぁ。それにしても、まさか雪が自分にリボンをかけて雪自身をプレゼントしてくれるなんて。そんな夢みたいなことがあるんだな」
雷太は柔らかく笑いながら雪を見詰める。
「だって……、何もないよりはましだろ?」
何となく照れ臭くなり、雪はマグカップを手にしたまま立ち上がる。
そのまま降り続ける雪を見ようと窓際まで移動した。
「雪、ありがとう」
雷太の声が耳元で聞こえたかと思うと背後から腕を回され抱き締められた。
背中から伝わる雷太の温もりが雪の胸を甘く疼かせる。
「雷太、メリークリスマス」
「メリークリスマス、雪。素敵なイブをありがとう」
雷太がそう言って雪の首筋にチュ、と音を立てながら唇を落とした。
くすぐったくて肩を竦めた矢先、窓の外に雪の目が釘付けになる。
「あ、なぁ、あれって鬣犬先輩じゃないか?わお、キスしてんな。やるなぁ」
窓の下に見える一番太い木の幹に派手な赤髪の鬣犬とそこに押し付けられながらキスをしている小柄な生徒の姿が見えた。
雷太は雪の肩越しにそれを見て体を強ばらせた。
「ん?」
「蛇塚だ」
─(*´-`)完─
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