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「早坂くんにあんなこと言うなんて」 「何だか感じ悪いね……」 近くの席の女子たちのそんな会話が聞こえたらしく、和はあからさまにチッと舌打ちをした。あの時に噂をされ、学校に来られなくなってしまった彼とは違う。和は周りの発言など関係ないようだ。転校初日でこの態度とは、今後勝手な噂をされたとしても本人は何も変わらないだろう。 操作される側の人間なのに、支配されることはないって、それは……。 「面白くないなぁ」 「は? 何言ってんだてめぇ」 あの時の彼は支配されてしまい学校に来られなくなった。操作される側の人間はそうして当たり前を奪われていくしかないのだと思い込み、だからこそ操作される側の人間になるものかと誓ったのだ。何を言われても、思われても、全く気にしない強さを持つという考えはあの時の俺の中には無く、それでここまで来たのだから彼が支配されないでそのままいられるというのは正直気に入らないし面白くもない。 ──彼の強さを壊してみたい。 せっかく俺のイメージが固定され、信頼を得ることができたのだから、それを使って試せることがあるはずだ。 「刺激のある日常は好き? 和、俺と仲良くしようよ」 まずは、仲良くなるところから。 「だから下の名前で呼ぶなって言ってんだろ。何回も言わせんなよ。お前ってバカ?」 「いいじゃあないか。和って可愛い名前なんだから」 「それが嫌なんだって分かんねぇの? どう見たって俺に可愛いは似合わねぇだろーが」 「自分がそう思いこんでいるだけじゃあ? 案外可愛いが似合うかもよ」 さっさと席に着けばいいのに話しかけた俺に向かってギャンギャン吠えている和は、周りからの目線なんか気にも留めずに、俺の机に手を付いてバンッと叩いている。 どこかほわんとしている担任だけは「早速仲良くなったのね」と笑っているものの、クラスメートのほとんどは冷たい視線を彼に送っている。「構ってあげている優しい早坂くんに対して失礼な態度を取る古里くん」というイメージが付いたところだろうか。

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