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「和、大丈夫か?」
放課後になり、誰もいなくなった教室でそう聞けば、やっと目を合わせてくれた。あの時から一度も合わせてくれず、なかなか話しかけられなかったから、目が合っただけで少しだけホッとした。一応罪悪感はあるんだ。けれどその罪悪感よりも自分の欲の方が勝ってしまう。もうすぐ本当に和には俺しかいなくなる。そうすればただの好意が、特別なものに変わるはず。
「大丈夫に見える? 俺は何も知らねぇんだよ。教室出て行って戻って来たらアレだもん。知るかってんだ。それに、マジであの女の課題だっていらねぇ。アイツより頭良いのに盗むかっての」
「和……、今日もお前の家に行ってもいい?」
一人になったら心細くなるだろうと頭を撫でれば、いつものようにその手を振り払うことなく、和は体を丸めた。
「……なぁ、徹。お前はたったの1%も俺のことを疑ってないわけ?」
「疑ってないよ。疑うわけがない。俺は毎日和と話をして関わって、和のこと知っているつもりだよ。可愛くて優しい和はあんなくだらない盗みなんかしない。信じているよ、なんてことも言わない。信じなくても和はそういうことする奴じゃあないから」
「……そうか。俺のことを分かってくれるのって、徹だけだな。嫌な奴だと思ってたけど、お前っていい奴だし、いてくれて良かったって思う」
「素直だね。そういう和も好きだよ」
弱さを見せる和を見ていると、気が急いてくる。君には俺しかいないのだと早く分からせてやりたい。和を抱きしめながら、俺はこれからに期待で胸を膨らませた。
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