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第8話 不意打ち
…………。
……。
「ん……んん……あれ……」
あれ……俺……なにやってたんだっけ……?
頭の下には雑誌が枕代わりに積み上げられていて、身体には薄い毛布がかけられている。でも、下は堅いフローリングで、身体がちょっと痛い。
あれ? 昼寝でもしてたんだっけ?
「あ、ようやく起きたね。洋平おはよ……もう昼過ぎだけど」
「恭二くん……? あ、そうか俺は……」
意識を失うまでの情事と快感が脳裏に蘇って、カーッと顔が熱くなっていく。
「変なの。今さら照れることじゃないでしょ?」
「いや、でもほら、なんというかその……」
「ふふふ……。洋平のそういうところも、可愛くて好きだよ」
不意に言われた『好き』って言葉に、身体だけじゃなく、心までもが熱くなってしまった。
恭二くんは無意識で言ってるんだろうか……。
小悪魔って、恭二くんみたいな人のことを言うのかもしれない。
「あ、この枕とか毛布とか、恭二くんがやってくれたの?」
「うん。さすがにあのままにしておくのはね。ちゃんと、せーしも拭き取っておいたから安心して。2人ぶんのせーし拭き取るの大変だったんだよ」
「あ……ごめん……ありがと……」
毛布をどかすと、すっぽんぽんの俺の身体がある。エプロンは外され、脇にたたんで置いてあった……が、ここから見てもシミができてゴワゴワしてるのが分かる。
……洗濯しなきゃだなあ。
「ねーねー。ぼく、おなか空いたー」
「ああ、もうこんな時間だもんな」
時計を見ると、もう13時を回っている。
「洗濯機回したらなにか作るから、ちょっと待ってて」
「洗濯なんてあとでいいから、先に作ってよ」
「早くしないとシミが取れないかもしれないからダメです」
「いいってば。だって……」
そこまで言って、一拍置いて、また口を開く。
「また……汚れるかもしれないでしょ……?」
その顔があまりにも妖艶で、午前中に2発も特大花火を打ち上げたチンコ台が、またムクムクと起き上がってきた。
「あはは! すっごい元気じゃん。でも、今はだ~め。ご飯が先だよ。おやつは下半身で美味しくいただいたから、次はおなかを満たさないとね」
うぐぅ……。恭二くんのほうが余裕たっぷりなんて、年上としては情けない限りだ。
しかし、腹が減ってるのは俺も同じ。ここは大人しくご飯の準備をしよう。
冷蔵庫へと向かう俺に、後ろから声をかけられる。
「あ、なるべく元気が出るものお願いね」
その言葉に、午後のハッスル期待値がどんどん上昇し、俺は、サオを勃てたまま冷蔵庫の物色に取りかかった。
……全裸でチンコをギン勃ちで冷蔵庫を見るって……。
自分の姿がものすごく変態チックに思えてヘコむけど、一度勃ったモノは中々おさまらない。気を取り直していくしかない。
「えっと……なに作ろうかな……」
「どんな材料があるの?」
いつの間にか後ろに立っていた恭二くんにビックリして振り返る。
「あれ……。うわ、なんで冷蔵庫見ながらビンビンになってるの? あはは、おかしい」
自分でも思っていたことを言われて、心をナイフでえぐられたようだ。
そんな俺の様子を見て、恭二くんがフォローを入れてくれる。
「でも、それだけ、ぼくのことが好きってことだもんね」
「あ、その……」
言いかけた口に、柔らかいくちびるで蓋をされた。
少しふれるだけの、優しいキス。
「……ぼくも……大好きだよ」
それだけ言って、恭二くんはイスに戻って、俺に背を向けた。
俺は、くちびるを押さえたまま、その場に立ち尽くしていた。
冷蔵庫は、『早く閉めろ』と電子音を鳴らすが、そんなもの気にならないほど、ただ、恭二くんの背中を見つめていた。
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