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第8話

「うちは親しくしている親戚は、オーディションのときに保護者になってくれた叔父さんだけで、その叔父さんもカツカツの暮らししてるから、お金の面では頼れないんです」 「……保険金とかなかったのか?」 「ありましたけど……、父親が生前借金をしていて、それを払ったらアパートを借りるのが精一杯のお金しか残らなくて……」 「おまえ、見かけによらずしっかりしてるんだな」 「見かけによらず、だけ余計です。月野さん」  ひなたがぷーっとふくれて見せると、月野がククッと笑った。 「そんなふくれっ面できるくらいなら、もう大丈夫だな」  そう言って月野は大きな手で何度もひなたの髪を撫でてくれた。 「……順番が来たら起こしてやるから、もう少し眠れ」 「はい……」  髪を撫でる月野の手に不思議な安堵感を覚えながら、ひなたは目を閉じた。

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