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第99話

カーテンがカサ、と揺れ開かれた先にいたのは、先生だった。 「月山くん、大丈夫?倒れたって聞いたけど…」 「せん、せ」 「保健の先生長引きそうだから代わりに来たよ。あ、秋人くんはもう教室戻って授業受けておいで、ありがとうね」 「いえ、それじゃ俺は失礼します」 秋人と呼ばれた彼は先生に礼をしてそのまま保健室を出ていった。 扉が閉まる音を確認し、先生は近くにあったスポーツ飲料を水で薄めコップに注いで渡してきた。 「とりあえず水分補給ね、全部飲めなくても大丈夫」 「ありがとうございます」 今だバクバクと鼓動を打つ心臓を落ち着かせようと渡されたコップに口をつける。 薄めたスポーツ飲料は少し変な味で、少しずつ飲む。 「今日は暑かったからね、しょうがない」 「いえ、ちゃんと水分補給してなかったから……あの、さっきの人って、」 「秋人くん?1年の子だよ。綺月が倒れた時彼がここまで運んできてくれたんだって」 「そう、ですか」 「…なんか言われた?」 「っいえ、別に、何も」 「嘘。手震えてる」 手を重ねられ、自分が震えていた事に気づく。熱中症のはずなのに、手先だけは冷たく先生の手は温く感じた。 「アンダーシャツの事、聞かれて……その時、先生が来て、」 「うん」 段々、息苦しくなる。 「何、言われるのか怖くて、息が、詰まって、っ、」 「…うん」 段々、涙が溢れそうになる。 「やっぱり、俺は、変なんだって……っ」 なんでだろう。今まで他人の目なんて気にしなかったのに。今聞かれるのが凄く怖い。 先生と一緒になってから、自分は弱くなってしまったみたいだ。 溢れる涙がコップにぽつ、と落ちる。 先生はコップを手から取り上げると、肩を押されベッドに沈む。ぱち、と瞬きをすれば涙が零れ、指先で払われる。 「綺月は、変なんかじゃないよ。知られるのが怖いって思うのも、当たり前の事」 髪の毛を梳き、頬を撫で、柔く手を握られる。 「大丈夫、怖い事は怖いって言っていいんだから。自分の意思を伝えたって、誰ももう綺月の事を怒る人はいないよ」

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