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第81話

平和な日常、平凡で何も無い、漫画みたいな事件が起きることも無い。 好きな人がいて、友達がいて、毎日が幸せ………って訳じゃないけど。 でも、好きな人と一緒にいれる日常はまだ夢みたい。 「綾っち〜数学の小テストまた採点間違えてんだけど」 「えっ嘘!?どこどこ」 「ほらここ〜!マジで綾っちしっかりして〜!!」 「ほんと綾先生抜けてるとこ多い」 「ぐぬぬ……反論できぬが悔しい」 「お願いだからしっかりしてよね〜、次は気をつけてよ〜!」 「くっそ〜言いたい放題言いやがって………」 「………先生」 そっ、とか細い声で呼びかけると、花を咲かせるように笑ってこっちを向いた。 「綺月、どうした?」 「…名前で呼ぶのは止めてくださいって、前にも言いましたよね」 「え〜だって月山って呼ぶのもなんか他人行儀だし……」 「学校では一応他人なんですから我慢してくださいよ」 「むー……でも綺月だって名前で呼ばれると嬉しそうな顔するし」 「!し、してませんよ」 「うっそだ〜嬉しいでしょ〜?」 「もうっ、怒りますよ!?」 「いいよ、怒っても」 「!」 ずいっと顔を近づけられ、胸がドキッと高鳴る。 俺にだけしか見せない、俺にしか見せてくれないその笑みに顔がカァーって紅くなる。 「綺月が怒ってるとこ見たい、見せて?」 「ちょ、ここがっこ……先生!」 「ははっ冗談冗談、家に帰ってから見せてもらうから」 「〜〜〜っ」 自分ばっかりこうも染められて悔しい。大人には勝てない。 でも、惚れてしまったが負けというヤツで。 だから俺は、今日も先生を好きでいる。 明日も好きで、明後日になったらもっと好きになっている。 大好きで、愛おしいと想えるのはすぐそこで。 「ねぇ、先生」

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