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⑤
その日の帰り、俺は泣き疲れて車の中で寝てしまった。目を覚ますとそこは車じゃなくて杏梨の部屋だった。
「起きたのか?」
「寝てたんだ俺」
杏梨に差し出されたコップには冷たい紅茶が入っていた。それを飲むと乾いていた喉が潤いふぅ、と息をはく。
「やっとケジメが着いた気がするんだ。」
「俺も。連れて行ってくれてありがとう。」
まったく何歳になっても元気なもので俺は今杏梨のベッドの上に居る。勿論2人とも裸だ。
「絶対腰死んだ。」
「ハッハッ、そう言うなってお前だって満更でもなく煽って来たじゃねえか」
「なっ、煽ってなんかない!!」
隣で笑ってる杏梨を叩いた。
「そう言えばお前から見て最近のあいつはどう思う?」
「蒼の事?最近は眠れないって言うことも無いみたいだけど相当疲れてる感じね、」
「そうか、実はこの間千尋に菊池くんから連絡があったらしいんだ」
「本当?」
「ああ、何でも帰れる目星が着いたから1週間後こっちに戻ってくるそうだ」
「そう、じゃあひとまず蒼の事は安心だね。」
夏もそろそろ終わりを迎えようとしているこの季節。
それでも暑さはまだ残っていた外に出れば汗が出る。
俺にとって春と同じ位この中途半端な時期には大切な思い入れがある。
杏梨という存在が俺にとって大切な存在なのと同じように蒼にとっても春野くんという存在はきっとなくてはならないものなんだろう。
偶然の出会いが運命の出会いに変わる。
あの春に流した涙の味もあの日優さんの前で流した涙の味も俺は一生忘れない。
心の篭った涙は塩っぱい。
俺はこれから何回涙を流すだろう。きっとこれからも悲しいことや苦しい事、嬉しい時事も沢山ある。その度俺は涙を流すかもしれない。
何処で、いつ涙を流したとしてもそれを拭ってくれるのは杏梨がいい。
どんなに険しい道でも隣に杏梨が居てくれるのなら俺はどこまでだって行けるんだから。
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