2 / 7

第2話

「じゃあ、またよろしくお願いします!」 馴染みの営業先である和菓子屋から、雨上がりの独特な香りがする屋外へと出る。手には大好物の栗羊羹。店の前の道路を渡って、向かいの図書館の入り口手前にあるスペースでそれを食べるのがいつもの流れなのだけれど。 「あー、やっぱそうだよなぁ…」 お気に入りの木陰の下のベンチは、やはり予想どおり雨に濡れていた。雑巾など持ち歩いているわけもなく、諦めて帰ろうかとした時、入り口の自動ドアが開いた。 何の気なしにそちらへ目線をやれば、何やら黄色いエプロンを着けた若い男性が慌てた様子で走ってくる。雨上がりの濡れたタイル張りの上で走ればどうなるのか、それは考えなくても明らかだった。 そこからは、まるでアニメのようにスローモーションで動き出す。 「うわぁっ⁉︎」 見事にタイルの上で滑った青年が、ふわりと宙に浮く。羽根のように軽やかに、とは言い難いが、しかしながらまさに【ふわり】という形容詞がぴったりだった。 ドサッという音で我に返り、慌ててその青年の元に駆け寄る。 「おい…大丈夫か?」 「ったたた……って、ああっ!羊羹の人!」 「………はあ?」 それが、二人の始まりだった。

ともだちにシェアしよう!