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第3話

「あの……ホント、すいません」 「ああ、別に気にしなくていいから」 華麗に宙を舞った結果、腰から落下した。その着地点には溜まった雨水。 ドサッ、と、バシャっ、が、同時に音を立てる。呆然とそれを見ていたが、はっと気付き駆け寄った。 「おい…大丈夫か?」 「ったたた……って、ああっ!羊羹の人!」 「………はあ?」 手を貸して青年を立ち上がらせると、なんだか見知ったような物言いで酷く驚かれる。 びっしょりと濡れたズボンが脚に張り付いて気持ちが悪いのだろうか、しきりにそこを引き剥がそうとしていた。 「ケガは?」 「あっ、いえ、ない、です…っ!」 「そうか。ちょっとここで待ってな」 「えっ?あの…え?」 わたわたする青年を残し、図書館の隣にあるコインパーキングへと向かい、自分の車から袋に入ったシャツとスラックスを持ってきた。クリーニング済みのタグを千切って自分のポケットに入れると、ハンガーから取り外してシャツのボタンを開けていく。 ほら、とそれを差し出すが、もちろん青年はすぐに受け取るわけもなく。痺れを切らしたのか、青年をぐいぐいと図書館の中へ押し込める。そのままトイレへ向かい、誰もいないのを確認すると、入り口の扉を閉めた。 「ほら、脱げ」 「なっ、何言ってんですか!」 「そのままだと風邪引くだろ?ほら、これ着ろ」 「あ…はい、ありがとうございます」 おずおずと手を差し出して青年がそれを受け取るのを見て、満足げに頷く。 「あ、あの…」 「ん?ああ、悪いが下着までは無いからな」 「わっ、分かってます!違くて…あの、えーっと、あの…」 「なんだよ、早く着替えないと脱がせんぞ?」 言うが早いかエプロンの紐を解き始めた。慌てて青年がそれを阻止しようと紐を握り、個室へと逃げ込む。 ガチャ、と鍵を閉め、青年が大きく息を吸い込んだ。 「あ、あのっ!よかったらこの後おやつ食べませんかっ!」

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