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第33話
それから午後の授業を終えて部活のため佐久間と馬のところへと向かう。
「そういえば昼大変だったな。
大丈夫か?」
碧のあの場面を見ていた佐久間が聞いてくる。
「はい、俺は大丈夫です。」
「そっかよかった。」
そうにっこりとほほ笑む佐久間。
「しかしお前九条一族なのは驚いたな。
この国で一、二を争う大きな財閥だからなぁ。」
「九条家ってそこまで凄いんですか?
流石にそんなにとは思いませんでした。」
「………マジか?
九条つったら家具や文房具、最近じゃゲーム開発とか結構幅広い事業に手を出してる。
九条ブランドは高品質で丈夫だから人気だしな。
お前それを知らないって相当だぞ?
お前って頭いいくせに世間知らずだよな。」
「……」
知らなかった……
自分の家の事なのに何をしているのかも知らない。
父は仕事のことなど家では話さないし自分は知る必要もなかった。
でも、あまりの無知さに恥ずかしくなる。
すっかり落ち込んでしまった希一に佐久間はちょっと言い過ぎたかもと反省する。
「まぁ知れたんだからいいんじゃないか?
もっとちゃんと知りたいってんなら九条碧に聞いてみればいい。
喜ぶぞ?」
「こんな無知な自分に教えてくれますかね?
何も知らなかったなんて怒られそう……」
「大丈夫、それはないから。」
あれだけ希一に惚れてるんだ。
彼からしたら教えてくださいなんて願ったり叶ったりだろ。
とは、希一には言わないけど。
だってその方が面白いだろ?
碧には何の恨みもないが俺様なところは苦手。
そんな奴が好きな子に対して右往左往しているのが本当に笑える。
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