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第39話
「あの、気づいていないって……」
「ん?言葉通りだよ?
あの人は今まで本気で人を好きになったことなんてない。
だから自分の中に生まれた感情をよくわかってないんだよ。」
「マジっすか……」
これはまた面倒だなと思った。
普通気づくだろ。
でも、そう言うのに耐性ないと気づかないもんなのか……
希一も彼の好意に気づいていないようだし。
「面白いだろ?
だから、この事は碧様にはし~」
口元に人差し指を立ててそう言った。
それを見て陽介はああ、こいつ食えないやつだと冷めた目で見る。
それと気を付けないとこちらの奥底を探られる。
「おいお前ら!!
こそこそと何をしている!?」
しびれを切らした碧が二人の所へやってきた。
「ははっ、嫌ですね。
貴方に突っかかると葬られますよとアドバイスしてあげただけですよ。」
「お前は‼僕を何だと思っているんだ!?」
主だというのに容赦ない。
碧もなぜ彼を傍に置いているのか陽介には理解できなかった。
と言うかこんなところで油を売っている暇などない。
希一のところへ行かなくては。
「先輩、俺行くところがあるので
これで失礼します」
陽介は二人にぺこりと頭を下げて希一のいる寮へと急いだ。
「……村瀬陽介、ねぇ……」
雫は彼が気になって仕方なかった。
持っている雰囲気が一般の人とは少し違う感じ。
雫は彼の去っていく後ろ姿を見つめていた。
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