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6 入社一年目10月。

『山崎。お前もう半年だろう?一人で回るようになって3ヶ月。全然顧客が掴めていないじゃないか。』 『すみません。』 部長に説教を喰らいながら自分のできなさに落胆する。 悔しい… なんでこんなにうまくいかないんだろう。 世の中にはたくさんの保険会社があって、自分の会社の商品が一番いいということをアピールしなければいけないことはよくわかっている。 自分の勉強不足でお客様の質問に答えられないことや、自分自身が保険の内容を熟知していないことが原因でこんなことになっているということもわかっていた。 俺、向いてないのかな… 『山崎、怒られた?』 コイツは同期の佐藤で、なかなかのやり手だ。 同期の中で一番仲が良くて、そして一番よくできる。 『怒られた。ってか、お前本当尊敬するわ。なんでそんなに取ってこれんの?』 『なんでって…センスの問題?』 『はぁ…じゃぁ俺センスないんだわ。向いてねぇのかな…』 『いや、センスってのもあるけどさ、お前の場合は保険の内容覚えるのが先でしょ?』 『バレてた?』 『ロープレした時にコイツ覚えてねぇなってすぐわかったよ。』 ロープレというのは、接客の練習みたいなものだ。 月に一回営業は接客のロールプレイングをして、日々のスキルアップを図る。 『俺もうちょっと勉強するわ…』 『おう!!頑張って。』 とは言ったものの… いざ本などを熟読してみたが全然頭に入ってこない。 やっぱ向いてねぇのかな… 時刻は午後10時を廻っていた。 『やべ。もうこんな時間。』 周りを見渡すと俺一人で、焦って片付けを始める。 『うわっ!!!』 急に首筋に温かさを感じて振り返る。 そこには、缶コーヒーを持った小宮さんがいた。 『こ、小宮さん!?』 『お疲れ。』 『お疲れさまです…どうしたんですか!?』 『ん?アポの帰り。お客さん話長くて…直帰してもよかったんだけど、個人情報持ってるし…』 『あっ…なるほど。』 ちょっと期待した俺がバカだった。 俺を待っていた…なんてわけねぇわな…。 『まだ残業すんの?』 『いや、ここだけ片付けたら帰ろうかなって。』 『そうか。まぁ、気をつけて帰れよ。お先。』 ポンポン 『お、お疲れさまです!!』 ポンポン? 俺、今ポンポンされた? 気をつけて帰れよ。頭ポンポンって… こんなことにときめいている俺って…女子かよ!! でも本当やべぇかもな…

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