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76 入社三年目11月。
お菓子やジュース、お酒におつまみ、ケーキを持ってインターホンを押す。
『はい。』
『山崎です。』
『おう。今開けるな。』
家にお邪魔するのは二回目で、うろ覚えで歩いてきたが、あっていたようだ。
ガチャリと扉が開かれ中に入る。
『すっげぇ荷物。ありがとうな。』
『いえ。』
小宮さんが俺から買い物袋を受け取り冷蔵庫の中に飲み物を入れる。
俺は何をしようか…
そう考えていると小宮さんが言う。
『昼飯食った?まだなら何か作ろっか?』
『まだです!!小宮さん料理できるんですか!?』
『できるって言っても少しだけどな…山崎オムライス好きだったよな?』
いつかの洋食屋のことを覚えてくれていたらしく、俺は大きく頷く。
『よし、作ろ!!』
ピーマンや玉ねぎをものすごいスピードでみじん切りにしていく小宮さんを見る。
この人にできないことはないのか?
『そんなに見んなよ。恥ずかしい。』
照れながら笑う小宮さんが可愛い。
『向こう座ってて!!できたら持って行く。』
俺はベッドを背もたれに座りながら小宮さんを眺める。
うん。いい眺め。
よくできる奥さん?って感じかな?
いや、家事をしてくれる旦那さん?
俺はニヤニヤしながら見ていたようで、オムライスを運んできてくれた小宮さんに突っ込まれてハッと我にかえる。
『ニヤニヤしてどうした?』
『いや…その…』
『料理する俺に見惚れてた?』
冗談っぽく言う小宮さんに俺は頷く。
『マジかよ?恥ずかしいな…』
このやり取りがなんだかすごく幸せで、こんなに幸せでいいのだろうかと怖くなった。
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