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第7話 風邪引きさんは甘えん坊?
side:流星
俺は大好きなその人にメールを送るとベッドに突っ伏した。
「う~~~」
「流星 、お母さん仕事に行くけど、夕飯はテーブルの上に置いてあるからね」
「うう~」
気分は最悪だ。
最近、絃 さんは小説の締め切りが近いらしくてなかなか一緒の時間が過ごせなくて、ようやく一段落着いたから会えるって張りきっていたのにこの様だ。
心理学の講師が産休でしばらくの間休講になったから、絃さんに会いに行こうって思っていたのに。
このタイミングで風邪なんてひいちゃうなんて有り得ねぇ~。
頭はガンガン痛むし喉はイガイガするし、おまけに身体が重怠い。
こんなんじゃ絃さんにも会えないし、会えたとしても風邪を移しちゃ大変だ。
絃さんには心配かけたくなくて、だからメールには急な用事ができたって送った。
あ~あ、今日は一日安静かあ。
「絃さんに会いたかったな……」
風邪で熱も出てきたのか。浅い眠りにしかならなくて、うとうとしていた時だった。
ピンポーン。
突然のチャイムに起こされた。
「母さん、誰か来た~」
ベッドにうつ伏せて母さんに助けを呼ぶ。
だけど家はシン……と静まり返っている。
ああ、そうだ。母さんは仕事に行ったんだった。
ピンポーン。
ぼーっとする頭で理解したら、またもやチャイムが家中に鳴り響く。
ああ、もう。わかったよ、出ればいいんだろう出れば!!
俺は重たい身体をベッドから起こすと、足を引きずるようにして廊下を歩く。
うう、こんなに広かったっけ俺ん家。
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