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target01.赤色の惨劇

「はぁ…っ、ぐっ……は…っ!」 周囲は、赤かった。 他の色など存在しないように、全て赤に塗り潰されている。 赤の中で動く黒い少年が、息苦しそうに喘ぐ。 少年の肩からは血が流れ、周囲に見るも無惨な姿で転がっている死体からも禍々しい赤色が流れている。 「返せ…!返せ…よ…ッ! おれの、父さんと母さんを……みんなを、返せッ!!!」 鋭い眼光の灰青色の目で、前に立つ者を睨み付けて叫ぶ。 そこには、ひたすら真っ直ぐな殺意。 そして………憎悪。 それを受けて、銀色の髪と白い着流しを血で染めた男が赤い眼を細める。 「クククッ…お前の殺意は心地よい……。 そしてその血は」 唇に付着した少年の血を舌で舐め取る。 「極上の味だ……」 そして、恍惚の笑みを浮かべた。 少年は怒りにギリッと歯を噛み締め、抑え切れない殺意に震える。 「許さない……ッ!おれがお前を、殺してやるッ!!!」 叫んだ瞬間、ぶわっと風が沸き起こり鎌鼬(かまいたち)を起こす。 切り裂く強い風に窓ガラスが割れ、破片が飛び散る。 しかし白く丸い壁が発生し、男に掠り傷さえ付ける事も叶わない。 「ほう……まだそんな力があったか」 白い壁を消すと、至極愉しげにクツクツと喉を鳴らす。 「しかしもう何の力も働かないだろう……そもそも動けないように血を"送り込んだ"のだからな。 それでも力を使えるとは……やはり、この俺が見込んだだけの事はある」 「くそ…ッくそッ!!!」 喋り続ける男に目も呉れず、この憎らしい男を傷付けようと懸命に力を振り絞るが、意思に反して身体はピクリとも言う事を訊かない。 「クククッ……待っているぞ。 力を付け、美しい憎悪と殺意にまみれて、いつか」 辺りに風が起こりガラスが舞い上がる。 そして、下から徐々に身体が消えていく。 「俺をお前が、殺しに来るのを」 姿が完全に消えて、甘い声だけが部屋に児玉した。 それをただ、見ているしか無かった少年。 料理人が、使用人達が、執事が、両親が殺されていく姿を、ただ見ている事しか出来なかった少年。 小さな身体全部を埋め尽くす、喪失感と虚無感。 全てを失った…壊れそうなほどの絶望感。 「あ、ぁ………あ゙あぁあ゙ぁあ゙あ゙あああッッ!!!!!」 天を仰ぐ眼は……血のように、赤い色を帯びた…―――。 (いつか必ずお前は俺を殺しに来る) (そして、その時……お前の全てを手に入れる)

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